「闘争と家族愛をエンタメに仕上げる凄さ」ワン・バトル・アフター・アナザー kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
闘争と家族愛をエンタメに仕上げる凄さ
アメリカに革命家ってどれだけいるんだろうか。しかも本作に登場するのはそれなりの過激なやつ。拘留されている施設から移民たちを解放するという冒頭の作戦はたしかにレジスタンスだよな。弾圧される革命闘争(という表現が正しいのか迷うところだが)が描かれた後、逃亡先で16年が経過した現在に場面は変わる。
革命家として活動していた緊張感はもはやなくなり、面倒くさいことをのたまう父親になっていたボブ。包囲網をかいくぐりながら、さらわれた娘のウィラを救うために奔走する。
面白いのは革命組織が水面下できっちり根付いているところ。緩さもあるがきっちり組織されている。暗号を確認するシーンとか結構笑えたりする。でも、白人至上主義のやつらと闘っている姿はカッコいい。本当にこんな闘争があるのかは怪しいが、今のアメリカの問題を浮き彫りにする効果はあったはずだ。
ただ、本作のメインは革命家たちの闘争ではなく、家族愛だと感じた。闘争よりも家族を選ぼうとした男と、子どもを育てることよりも闘争を選んだ女が描かれる。そして彼らは家族としてどんな選択をしていくのか。DNAと育った環境・教育。そんなことを考えさせられる娘の存在。ウィラを演じたチェイス・インフィニティが素晴らしい。気が強そうで凛としてて、でも優しさを内包している。親の監視から逃れるしたたかさも持っていたりする。いろんな事実を提示され、それでも目を背けなかった彼女の闘いが印象的だった。
革命家たちを描くことで小難しい話になるわけでもなく、きっちりエンタメ作品に仕上げている。追ってくる車からウィラが逃走するシーンとか、その決着も含めて地味ながらとても緊張感のあるいいシーンだった。好き嫌いは分かれるかもしれないが、とても質の高い映画だ。
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