劇場公開日 2025年10月3日

「PTA作品が苦手な人、初見の人にこそ観てほしい一作」ワン・バトル・アフター・アナザー コブさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 PTA作品が苦手な人、初見の人にこそ観てほしい一作

2025年10月3日
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鑑賞方法:試写会

PTAにどこか苦手意識があった自分だが、本作でその感覚は見事に払拭されたと言っていい。これまでPTAが合わなかったと感じていた人、未見の人にこそ強く勧めたい。

自分のPTA初体験は『マグノリア』。映画的なカットや雰囲気の豊穣さに惹かれつつ、物語の掴みどころに戸惑い、エンタメとして“乗り切る”敷居の高さも感じていた。
対して本作は、父と子をめぐる物語が至ってシンプルでありながら、解釈の余地を豊かに残す。観賞中ずっと気にしていたのは、タイトルの“ワン・バトル”をどう定義するか、という点だ。劇中の連続する戦闘を指すとも読めるし、映画全体をひとつの“ワン・バトル”と捉えるとラストの余韻がいっそう心地よく広がる。前半を“ワン・バトル”、以降を“アフター”と読む視点も面白い。
シンプルな表層の下に、エンタメの範囲で程よい思索を促す——個人的にPTAの新機軸だと感じた。時折挟まれるシニカルな笑いで、思考が硬直しすぎないバランスも絶妙。

ハリウッド大作的な見せ場も研ぎ澄まされている。特に終盤のカーチェイスは、見たことのない角度から映画的快楽を更新する一連で、思わず身を乗り出した。
また“音”の設計は特筆に値する。ピアノを主旋律にした劇伴の品の良さ、効果音の切れ、どれも劇場空間で冴え渡る。冒頭、クラクションを思わせるようなBGMの入りで一気に掴まれるので、開映前には必ず席に着いておきたい。

ハリウッドを揺らす堂々たる一作。あなたにとっての“ワン・バトル”を、ぜひ劇場で目撃してほしい。

コブ
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