マルティネスのレビュー・感想・評価
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メヒコな『ラブレター』?
頑固で堅物で偏屈な定年間際のオッサンが恋をしたのは、
半年前に死んでいた人でした。
台湾🇹🇼にも冥婚ってホラーチックな風習と云うか都市伝説がありましたっけ?
本作の主人公マルティネスは、未婚の60歳。
とっくの昔に結婚は勿論、恋愛も諦めてる。
容姿はいたってダンディなイケオジだから素敵な笑顔で黙っていればモテるでしょうに。
いつも顰めっ面して無愛想この上ない、オマケに口を開けば、目に付いた他人の粗指摘🫵
要は中身ブスってヤツで、本人もそれは自覚済みで、今更変われるわけないと諦めきってる。
そんな折、アパートの自室の真下の部屋の住人が孤独死していた事が判明して、しかも半年間…誰からも気付かれなかった。
少しだけ…明日は我が身かもとモヤっていたところ、住人の遺品を捨てていた大家からマルティネスに、遺品の中にあんた宛のプレゼント🎁が有ったと渡される。
え?…なぜ?、、そりゃぁ一度か二度は見掛けた事はある。でも、軽く挨拶しただけで、プレゼント🎁を貰う謂れは無いのに…。
ふと窓から外を見ると、乱雑に捨てられている故人の遺品たち。
居ても立ってもいられず、気づけば全部拾ってきてしまった😱
失礼は百も承知と、故人の遺品を調べていく内に、故人…否、彼女の為人(ひととなり)が見えてくる。
彼女の名前はアメリア。
明朗快活で頑張り屋で料理と旅行が好き。
生前碌に話した事などなかった彼女を、、アメリアを亡くなってから好きになるマルティネス。
アメリアが遺していたメモにあった«やりたいことリスト»
一つずつ簡単なモノからやっていく内に、受動的で引きこもりがちだったマルティネスの生活が、少しずつだが確実に煌めいていく。
人生って、遣る瀬無くて殆ど凄く哀しいけど、だからこそ、楽しくて尊い…そう思える。
まぁ、ともすれば、アラ還オヤジが何キモいことやってんだ!何勝手に他人様の日記読んでんだ!デリカシー0か!って云いたくなるかもだけど、、
あながち、草葉の陰でアメリアも嫌な顔はしてないかもって、なんだか思えてくる。
古畑任三郎の3rdSeasonにある[古い友人]ってタイトルだったかなぁ?
殺人事件は起きないんだけど、犯人?が自ら命を絶とうとしている事に気付いた古畑警部が、津川雅彦さん扮する落ち目な作家に、
「いいですか!いいですか…たとえ明日世界が終わるとしても、今日始めちゃいけないって誰が決めたんですか?…誰が、決めたんですか?」
って云う熱いシーンが有るんだけどさ、、
そう云う味を感じた😆
ラテン気質のペーソスと温かい笑いにいくども胸を突かれました。これ、いい。とってもいい映画です。
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独りぼっちの僕。
来月で定年。嘱託での再雇用です。再雇用の申請がやっと叶いました。
本作、
「孤独『死』」と、「孤独の『生』」のお話。独りで死んだ年寄りと、独りで生きている年寄りが、アパートの下の階と上の階で暮らしていた設定。
この映画「マルティネス」には
僕の境遇との近似性と、
先日おなじような体験もしたばかりでしたので、それもあってか僕は終始胸が締め付けられてしまいました 。
【終活】と、【孤独死すれば特殊清掃が必要となる世代のストーリー】
うちの両親。サポート付き高齢者住宅(サ高住)に移ってもう1年半です。
「それまで彼らが長く住んだアパートをどのように片付け、最終的に引き払うのか」・・、これが三人の息子と両親の課題でした。本心に反する無理はさせたくなくて本人たちの気持ちを最優先にしました。老人の気持ちは毎日毎日180°揺れました。だから1年半、息子たちが家賃を払いました。
ひと月ごとに息子たちは 主(あるじのいなくなったあのアパートを訪ね、より 差し障りのない分別ゴミから仕分けをして処分していき、電気器具も調理道具も市の回収日に搬出。
そのたびにアパートの階段の下のゴミ出し場にはマルティネスと同じ「大きな粗大ゴミとポリ袋の山」が出来ました。
階下のアマリアと同じです。
それは小さな置き物だったり、ささやかな写真やカードだったり、お土産の人形だったり。そしてクリスマスのオーナメントや、タペストリーや、エプロン。アイロン台も調味料も料理の本もあります。録音テープも、ネックレスも、指輪も見つけました。
そして僕らも幼い日から使っていた見覚えのある食器の数々。衣類と膨大な書籍・・
山のような《捨ててはならない思い出たち》が黒いゴミ袋に入れられてゴミトラックに回収されて行きます。
「○○へ」と父の字で書かれた僕のための写真やメモの封筒が、弟から「こんなの出てきたからレターパックで送ります」と郵送されて来ました。一昨日の事です。
「形見分けのようで辛い」と弟にはショートメールを送りました。
堅物のマルティネスは、捨てたゴミを全て残らず、夜に、もう一度自分の部屋に回収したのでした。鍵だらけだったマルティネスのドアは、その晩は開けっ放しになりました。
・・・・・・・・・・・・・
アマリアが何ゆえか自分の事を思っていてくれたのだと、マルティネスは「死者からの小箱」を受け取るわけで、
それは愛と希望だけが ほろほろとこぼれ出す「年寄りのパンドラの箱」になったようです。
マルティネスは倒錯? いいえ。たとえ倒錯と呼ばれてもよいから、「年寄りの愛はこんなにもいじらしくて美しいのだ」と僕は彼を認めて褒めてあげたいです。
絶品の共演者=パブロやコンチータならずとも、そこにこそ涙がにじむのです。
映画館の帰り道は、両親の事もあって、寂しさと温かい思いがないまぜになって、込み上げてきて
頬が濡れました。
・・
東座の館主 合木こずえさん、
白黒の素敵な柄のワンピースに夜会巻。今夜はメキシコの美女になりきりでしたね 💕
「こんなにいい映画をプレゼントしてくれてありがとう。あなたは僕の大切な友だちです」と、
なんと!僕は大きな声で、映画館の出口で振り返って言ってしまいました!(笑)
これ、マルティネスのお陰だなぁ。
(元特別養護老人ホーム職員)
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どう見ても変態なのだが、そう見えない理由が至る所に隠されていた
2025.8.27 字幕 アップリンク京都
2023年のメキシコ映画(96分、G)
顔見知り程度の孤独死した隣人からプレゼントを贈られた初老の男を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本はロレーナ・パディーシャ
物語の舞台は、メキシコのとある町(ロケ地はグアダラハラ)
公認会計士として長年勤めてきたマルティネス(フランシスコ・レジェス)は、ルーティンな毎日を過ごし、家と職場を往復する毎日を送っていた
そのルートから逸れるときは水泳に行くか、公演の池を散歩する程度で、それ以上の行動を起こしてはいなかった
彼の住むアパートでは1階下の2Bの部屋から大音量のテレビの音が日夜鳴り響いていて、マルティネスは耳栓をせずにはいられなかった
本人に直接話しかけても無視される日々が続き、大家のベルタ(マリア・ルイーサ・モラレス)もほとほと困り果てていた
ある日のこと、60歳になったマルティネスに転機が訪れる
それは、定年退職を控え、後任の会計士パブロ(ウンベルト・ブスト)が西部支店から赴任してきたことだった
人事から何も聞かされていないマルティネスは、それを確かめてからでないと引き継ぎはできないという
だが、週明けに人事部のサンチェス(Martha Reyes Arias)から正式に聞かされ、渋々と業務を引き継ぐことになったのである
物語は、退職によって人生が揺らぎ始めたマルティネスの元に、さらに不可思議な出来事が舞い込んでくる様子が描かれていく
それは、大音量の主アマリア(メリー・マンソ)は半年前に自宅内で亡くなっていて、それが孤独死だったというものだった
さらに、顔見知り程度の関係だったのに、彼女からマルティネス宛の贈り物が残されていた
その箱にはインテリアで使うような置物がいくつか入っていて、マルティネスはどう扱って良いのか悩んでいた
大家は次の住人のためにアマリアの荷物を外に出していたが、何を思ったのか、マルティネスはそれらを自分の部屋に引き入れてしまうのである
物語は、まさかの遺品漁りからの故人の人生を準えていくという変態的な側面があり、なぜかそこまで変態行為に見えない不思議さがあった
それはマルティネスが妄想と現実をギリギリのラインで切り分けているからであり、それを象徴するのが、ランジェリーと添い寝をするシーンなのだと思う
そのシーンでは、初めはランジェリーに覆い被さる(正常位)のような体勢から、思い立ったように添い寝へと転換していた
マルティネスの中にある一線というのは、妄想を現実と結びつけてしまう即物的な行為であり、それ以外の行為は絶妙に「妄想世界でのデート」のように描かれていた
それゆえに気持ち悪さというものが際立たなかったのだが、そんな中でも「超現実に陥らせる罠がある」というのは憎い演出だと思う
アマリアはある男(Marco Aurelio Hernandez)の愛人だったという告白があって、それを知ったことによって、マルティネスはこれまでにない衝動に揺さぶられてしまう
愛人だと思われる男のところに突撃して、いきなり殴って去ったり、パブロの評価を人事に話す際にも誇張して悪い部分だけを伝えてしまう
我ここにあらず状態のまま他人に影響を与える行為を続けていて、ふと我に返った時には引き返せないところまで進んでしまう
思えば、マルティネスは自分の人生をコントロールしているようでできておらず、かなり周囲の影響を受けて路線変更をしてしまう男だった
それは、騒音が消えた後に自分で騒音を作り出したりという行為に見られ、一つの贈り物が人生を根底から覆す方向に向かわせていく下地となっていた
他人を最も嫌う男が、他人から影響を受けまくっているということ自体が人生の恥部のように感じていて、それが彼の孤独を生み出していたのだろう
理想の自分を求めた根源には、影響されやすい人柄というものがあって、その部分は最後まで変われない部分だったのかもしれません
いずれにせよ、一つのプレゼントがきっかけとなっているのだが、なぜアマリアはマルティネスにプレゼントを残したのかは不思議だった
それは劇中では描かれないのだが、マルティネスが同じことをしていることで、その理由というものが見えてくる
マルティネスは旅立つ前に同僚のコンチタ(マルタ・クラウディア・モレノ)に贈り物をするのだが、これは自分を忘れないでという意味なのだと思う
そして、贈り物をできなかったパブロに対しては、実際に彼の元を訪れて、思い出を作ろうとしていた
他人から影響を与えられる男は、他人に影響を与える人物になったことで、良くも悪くも人生の生き直しをしていく
それが正しいのかはわからないけれど、彼なりに導いた人生の結論だと考えるのならば、それを尊重してあげたいな、と感じた
身につまされる話
偏屈でとっつきにくい初老の男
自分の代わりにと若い男が職場に雇われるが、彼は人当たりが良くお節介な奴だ
階下の女が孤独に死に、男は彼女に思い入れて、女がやりたかったことをやっていく
それにより彼自身も変わっていく
自分を想ってくれた女は近くにいる
彼は幻の女を捨て、しがみついていた仕事を捨て、旅にでる
おじさんの行動をハートフルにファンタジーに味付け
物語性を取り払ってしまうと、退職間際の還暦で独身で偏屈なおじさんが、あることをきっかけにして精神的に病んじゃう(病みつつある)けれど、そこから回復して、人生をリスタートというお話し。
それで、おじさんは色々と普通じゃない行動をしていく訳なのですが、そこは映画なのでハートフルにちょっとファンタジー風に味付けした物語になっています。
悪くは無いけれど、それほど面白いわけでもなかったかな。
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