「ラテン気質のペーソスと温かい笑いにいくども胸を突かれました。これ、いい。とってもいい映画です。」マルティネス きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
ラテン気質のペーソスと温かい笑いにいくども胸を突かれました。これ、いい。とってもいい映画です。
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独りぼっちの僕。
来月で定年。嘱託での再雇用です。再雇用の申請がやっと叶いました。
本作、
「孤独『死』」と、「孤独の『生』」のお話。独りで死んだ年寄りと、独りで生きている年寄りが、アパートの下の階と上の階で暮らしていた設定。
この映画「マルティネス」には
僕の境遇との近似性と、
先日おなじような体験もしたばかりでしたので、それもあってか僕は終始胸が締め付けられてしまいました 。
【終活】と、【孤独死すれば特殊清掃が必要となる世代のストーリー】
うちの両親。サポート付き高齢者住宅(サ高住)に移ってもう1年半です。
「それまで彼らが長く住んだアパートをどのように片付け、最終的に引き払うのか」・・、これが三人の息子と両親の課題でした。本心に反する無理はさせたくなくて本人たちの気持ちを最優先にしました。老人の気持ちは毎日毎日180°揺れました。だから1年半、息子たちが家賃を払いました。
ひと月ごとに息子たちは 主(あるじのいなくなったあのアパートを訪ね、より 差し障りのない分別ゴミから仕分けをして処分していき、電気器具も調理道具も市の回収日に搬出。
そのたびにアパートの階段の下のゴミ出し場にはマルティネスと同じ「大きな粗大ゴミとポリ袋の山」が出来ました。
階下のアマリアと同じです。
それは小さな置き物だったり、ささやかな写真やカードだったり、お土産の人形だったり。そしてクリスマスのオーナメントや、タペストリーや、エプロン。アイロン台も調味料も料理の本もあります。録音テープも、ネックレスも、指輪も見つけました。
そして僕らも幼い日から使っていた見覚えのある食器の数々。衣類と膨大な書籍・・
山のような《捨ててはならない思い出たち》が黒いゴミ袋に入れられてゴミトラックに回収されて行きます。
「○○へ」と父の字で書かれた僕のための写真やメモの封筒が、弟から「こんなの出てきたからレターパックで送ります」と郵送されて来ました。一昨日の事です。
「形見分けのようで辛い」と弟にはショートメールを送りました。
堅物のマルティネスは、捨てたゴミを全て残らず、夜に、もう一度自分の部屋に回収したのでした。鍵だらけだったマルティネスのドアは、その晩は開けっ放しになりました。
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アマリアが何ゆえか自分の事を思っていてくれたのだと、マルティネスは「死者からの小箱」を受け取るわけで、
それは愛と希望だけが ほろほろとこぼれ出す「年寄りのパンドラの箱」になったようです。
マルティネスは倒錯? いいえ。たとえ倒錯と呼ばれてもよいから、「年寄りの愛はこんなにもいじらしくて美しいのだ」と僕は彼を認めて褒めてあげたいです。
絶品の共演者=パブロやコンチータならずとも、そこにこそ涙がにじむのです。
映画館の帰り道は、両親の事もあって、寂しさと温かい思いがないまぜになって、込み上げてきて
頬が濡れました。
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東座の館主 合木こずえさん、
白黒の素敵な柄のワンピースに夜会巻。今夜はメキシコの美女になりきりでしたね 💕
「こんなにいい映画をプレゼントしてくれてありがとう。あなたは僕の大切な友だちです」と、
なんと!僕は大きな声で、映画館の出口で振り返って言ってしまいました!(笑)
これ、マルティネスのお陰だなぁ。
(元特別養護老人ホーム職員)
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きりんさん、コメントありがとうございます。「マルティネス」まだ見てません。ボローニャは親切で話好きな人が多くて、映画館も多くて(昔は50館近くあったと井上ひさしが『ボローニャ紀行』に書いてました)食事がどこでも美味しくて、本屋さんも沢山あって、大好きな植物園もあって、大き過ぎず小さ過ぎず、ちょうどいい街でした
talismanさん
「マルティネス」のレビューがまだですね!
Bacchusさんと交わされていた「ボローニャの映画館」のお話、楽しく横から読ませて頂きましたよ🎶
「マルティネス」は、映画館の駐車場で知らないおじちゃんとお互い上気して長い立ち話をしてしまいました。
「良かったねー」って。