「悪趣味系ゴアホラーだが、映画の完成度はキャラの知能指数と連動して低い」子鹿のゾンビ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
悪趣味系ゴアホラーだが、映画の完成度はキャラの知能指数と連動して低い
2025.9.1 字幕 MOVIX京都
2025年のイギリス&アメリカ合作の映画(81分、PG12)
フェーリクス・ザルテンの童話『バンビ』のキャラクターを借りたB級スプラッターホラー
監督はダン・アレン
脚本はリース・ウォリントン
原題は『Bambi: The Reckoning』で「バンビ:審判」と言う意味
物語の舞台は、とある森の奥地(ロケ地はイギリスのWilding Wood
かつてその森には、優しい両親の元で生まれた雄鹿のバンビがいた
だが、両親は密猟者の手によって殺されてしまい、バンビは孤独の中で成長を重ねた
その後、雌鹿のファリンと出会ったバンビは、子鹿を授かることになった
だが、子鹿は何者かに連れ去られてしまう
さらにファリンは土地開発業者の車によって轢き殺され、バンビも有害物質を含む水を飲んでしまったために、凶暴な「何か」へと変質してしまうのである
それから数十年後、ハンターたちは森に増殖した危険動物の駆除のために森を訪れていた
ハンターのボス・マイケル(エイドリアン・ラルフ)は、相棒のエディ(ユアン・ボースウィック)と新人のタイラー(ビッグ・トブス)を連れて、森の奥深くに入っていた
一方その頃、その森の奥にある一軒家を目指すタクシーがあった
そこには夫サイモン(アレックス・クック)に息子ベンジー(トム・マルヘロン)を会わせたいザナ(ロクサーヌ・マッキー)たちが乗っていた
ベンジーと共にサイモンの生家を目指していたが、突如彼女らの前に一頭の巨大な鹿が現れた
鹿はタクシーに突進して横転させ、強力な力でタクシーを踏み潰そうとする
運転手のロブ(デヴィッド・アンブラー)は圧死し、ザナとベンジーはその隙を突いて、サイモンの生家へと辿り着いた
事故のことを聞いたサイモンの兄アンドリュー(ラッセル・ジェフリー・バンクス)たちだったが、タクシー運転手を確認するために弟のジョシュア(ルーク・キャベンディッシュ)が様子を見に行くことになった
だがジョシュアは獲物と間違われてハンターに射殺されてしまうのである
映画は、ザナたちがいるコテージに鹿がやってきて、そこにいる家族を皆殺しにしていく様子が描かれていく
アンドリューの妻ハリエット(サミア・マイティ)も犠牲になり、辛くもワンボックスで逃げることができたザナたちも、道路倒れた大木に行く手を塞がれてしまう
アンドリューと息子ハリソン(ジョセフ・グリーンウッド)、ザナがウインチで大木を固定し、ベンジーがエンジンをかけると言う作戦を試みるものの、そこに鹿がやってきて絶体絶命のピンチに陥るのである
ざっくりとあらすじを書くと誰が誰なのかわかるのだが、映画内で人間関係を把握するのはかなり難しい
また、主要な人物の名前が判明するのが驚くぐらい遅く、主人公のザナの名前が登場するのは中盤ぐらいになっている
その他にも説明下手な部分が多く、冒頭のナレーションが誰のものか(おそらくはメアリー、演:ニコラ・ライト)もわかりにくい
それ以上に「襲ってくる鹿が何物かわからない」と言う感じになっていて、冒頭の丁寧なナレーションがあってもスッと入ってこない感じになっていた
映画は、いわゆるパブリックドメイン化した過去のキャラを利用した二次創作の類で、原作のイメージからかなりかけ離れた内容になっている
共通点があるのかないのかわからない感じで、原題には「Bambi(仔鹿)」が入っているが、邦題は「ゾンビ」になっていたりする
配給も「これ関係ないんじゃね?」と言うノリで「ゾンビ」とつけたのかはわからないが、襲ってくる鹿は子鹿には見えないので、原題が意味するものはよくわからない
後半になってから「実は襲ってきた鹿には子どもがいた」と判明するのだが、その子鹿が童話のバンビなのかと思ってしまった
実際には襲ってきた鹿の名前がバンビとのことで、それゆえに「バンビによる人類への審判」と言う意味合いが込められているのだろう
いずれにせよ、どうやって殺されて行くかを楽しむ悪趣味系ゴアホラーなので、好きな人は自発的に見にいくし、誰にもオススメはしない作品だと思う
映画の完成度はかなり低いので自主制作レベルだと思うが、低予算で集客を見込むパブリックドメイン系映画はそろそろ規制した方が良いような気がする
権利が問題なくても、既存のキャラクターのイメージを損ねるのが良いとは思えない
通称としての「子鹿(バンビ)ですよ」と言う言い訳も「ファリン(原作に登場するバンビの友だち)」が登場するので通用しないだろう
完成度が高く、原作リスペクトがあればOKだと思うが、ホラー映画にする時点で無理な話だろう
それでも、その高みを目指すことは不可能ではないので、今後の制作者はこれらのB級を踏み台しにて良い作品を作って欲しいなあと思った
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