「女優になるには純粋すぎた」タンゴの後で こうたさんの映画レビュー(感想・評価)
女優になるには純粋すぎた
野心的な新人女優なら「えー、その程度で?」と思うかもしれない。
松田暎子さんなら「何言ってんの、このヒト?」と怒り出すかもしれない。
中森明菜は波乱の半生を「少女A」を歌わされたせいにするかもしれない。
和泉雅子のような、監督にどつき回されて本気で怒った目をした女優にはもう会えないのかもしれない。
あのシーンが問題なのではなく、あの瞬間に限界に達したのだろう。
あの役が19歳の女の子の許容範囲をゆうに超えていたことは想像に難くない。
彼女は心も裸にされた。
しかしドミニク・サンダが演じていたらそうはならなかったはず。
彼女の中で燻り続けたのは、あの日、あの時、女優としての自分を受胎出来なかったことへの怒りではなかったか。
もちろん彼女はあの作品で女優になった。
マリア・シュナイダーという悲劇の女優を演じ続ける女優に。
どんな運命に翻弄されようと、ヘロインに依存する理由にはならない。
それでも彼女は、自分に負けることで永遠に勝利した。
あの作品は彼女の物語になり、彼女のものになった。
ディスコミュージックが似合う、本当は陽気で素敵な女の子のものに。
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