夏の終わりのクラシックのレビュー・感想・評価
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大人の恋物語 わかる〜
すでに夫婦関係が破綻している男性と、子供と夫を自殺で亡くした女性とが一夏を同じ村で過ごす話
ランタイム2時間弱も、全くじさせないストーリー展開と、まドロっこしさを感じさせながらも最後まで進めない事情
初の映画館で、めちゃくちゃリラックスも🙌
爽やかなアラフォーの恋愛かと思いきや…
きっかけ
某サイト割引で1100円で観賞できたため。
あらすじ
夏の終わりは叔母の冷麺を食べたく帰郷するヨンヒと、母のシ後、実家の身辺整理を行うため帰郷したジュヌが出会う事で始まるアラフォー同士の甘く切ない最後の恋。
感想
ヨンヒのストーリー序盤と終盤でのキャラさ落差がエグい。高低差で耳キーーーンなるやつです。そして、そこがまたストーリーの肝になっている。
そのストーリーであるが起承転結はしっかりあり、登場人物のキャラや演技も良く、気付いたら映画の世界観にのめり込んでいました。
ヨンヒには幸せになって欲しい。てか、ヨンヒだけでなくジュヌをはじめとした出演キャラほぼ全員が幸せになって欲しい。皆、優しい。優しすぎる!!
しかし、中盤はほんの少しテンポが悪い気がする(ジュヌがヨンスに髪切ってもらって拗ねるシーン等)。
特に劇中にヨンヒがお昼寝するシーンがあるのだが、僕もそれ観ていてねむなった。
まとめ
やっぱり人間長いこと生きてると色々あるよな。そんなことを感じた映画。
この映画は大人になると刺さると思う。色々な経験を多く積んでいる人は特に考えるものがあると思う。
そして、大切な人と観て欲しいな。
その大切な人をもっと大切にしたくなると思う…そんな映画です。
皆さんも是非~
ひとつの季節を越えるたびに、人は魅力的になって行くのかもしれません
2025.10.6 字幕 アップリンク京都
2024年の韓国映画(115分、G)
原作は伊吹有喜の『風待ちのひと』
喪失を抱えた女性が故郷で訳あり男性に出会う様子を描いたヒューマンドラマ
監督はユン・ソクホ
脚本はユン・ソクホ&シン・ミンジェ
原題は『여름이 끝날 무렵의 라트라비아타』、英題は『La Traviata at the End of Summer』で、ともに「夏の終わりのラ・トラヴィアータ(椿姫)」という意味
物語の舞台は、韓国の済州島
都会で暮らしているヨンヒ(キム・ジヨン)は、夏の終わり頃になると、伯母のスンジャ(チョン・ヨンソク)の食堂を訪れては、彼女の手伝いをしていた
ヨンヒは美容学校で習っていた過去があり、地元では「ヨンヒに髪を切ってもらうと縁起が良い」とされていた
漁師たちの髪を切ったり、食堂の下ごしらえをしているヨンヒだったが、今年ばかりは様相が違っていた
それは、見知らぬ男性(のちにジュヌと判明、演:ぺ・スピン)の存在で、溺れそうになった彼を助けたことで、妙な縁が生まれたことだった
彼は母(ユ・ミスク)の遺品整理のために島を訪れていたが、彼自身も多くの問題を抱えていた
彼の荷物から「かつて飲んだことのある薬」を見つけたヨンヒは、何かと理由をつけて彼に絡もうとしていた
だが、彼の母の部屋に大量のクラシックのCDなどを見つけたヨンヒは、かねてから知りたかった「あるメモ」のことをジュヌに教えてもらおうと考える
そこで、その家の片付けを手伝うことと引き換えに、そのメモのことを教えてもらうことになったのである
そのメモには、いくつかのクラシックの楽曲がリストアップされていて、ジュヌはそれをiPodに入れて渡した
そして、時間の許す限り曲を聴いていたヨンヒは、探していた曲がバッハが作曲し、ジョシュア・グリーンというピアニストが録音した「Adage」という曲だとわかった
さらに、その音源にはピアノ演奏にハミングが混じっていて、ヨンヒにはその声が意味のあるものに聴こえていたのである
映画は、ある事情を抱えた女性が「自分の知りたい答えを持っている人」に出会うという構成になっていて、男性側は「自分の置かれている状況の軽薄さを知る」という内容になっていた
妻(ユン・ジミン)との関係に頭を抱えているジュヌは、自殺をしても逃げたいと思っていたが、その海にはいまだに帰らない人が眠っていたことを知る
海を海として認識できないヨンヒにとっては、そこに大切な人がいるはずの世界への扉となっていた
そして彼女は、そこには行くことができないと言い、そこに行くにはその場所にいる人の許しがないとダメだと考えていた
彼女が死なずに毎年この海を見に来るのも、これまでに彼女を支えてきた多くの人がいて、そんな人から教えてもらったことをジュヌに伝えて行くことになる
ヨンヒは自分のことは話すものの、ジュヌの話を深くは聞かない
それは、人の心というものはとても複雑で、語れる環境、タイミングなどが重ならないと本音というものは出てこないことがわかっているからだろう
映画では、ハミングが吹き込まれたバッハの「Adege」がメインテーマとなっていて、ヨンヒは息子の声だと思っていたけど、実際にはピアニストの声だったことがわかる
彼女は、その音楽の中に息子がいると思っていて、それは「音楽に無知だった自分を恥じてきたこと」につながっていた
だからこそ、今度会うときは「音楽の話ができる母親になりたい」と思っていて、そのためにジュヌに教えを乞うことなっている
ジュヌとしては、母ほどの才能もないままにその世界で生きてきたという過去があり、その情熱的な生き方に憧れを抱いてきたようにも思える
彼の世界は、ヨンヒの息子が行こうとしていた世界に近いが、ジュヌはその世界に嫌気が差している
さらに、ジュヌはヨンヒとの新しい生活を考えていたと思うが、それは今ではないこともわかっている
それゆえに、未来の話はせずに、ただ赤い夏を2人で終えることに身を委ねたのではないだろうか
いずれにせよ、ちょっと大人向けのストーリーで、理想とした世界の綻びを知っている人向けの内容だと思う
クラシックが引用されるが、そこまで深いことを知らなくても大丈夫で、海の向こうから帰ってこない息子をクラシックの音源の中に見つけてしまった母親を描いていたことがわかればOKだろう
その正体は残酷に思えるものの、それは赤い夏をちゃんと終わらせるには大事なことで、それによってヨンヒは黄色い秋へと向かうことになった
それはジュヌにとっても同じことで、若気の至りから続いている今を清算することで、彼自身もそこへと向かうことになる
なので、彼らが再会するとしたら、黄色い秋に生きている時間であり、それはいずれは訪れるのではないかと思わせるエンディングになっていたのだと感じた
太陽の道を歩み、天使の階段を登れ。黄金色の秋に向けて
夏の終りの済州島を舞台に中年の男女の一時の触れあいを描いた物語です。
主人公自らが「おばさん」と自称するように、美男美女の甘い甘いラヴ・ストーリーではないかもしれません。
けれど二人の顔に刻まれたその皺が、たるみが、見る者の胸に二人が歩んだ人生の尊さをまざまざと映し出します。
素敵なインテリア、美しい風景、心に響くクラシック音楽。
それは息を呑むような華々しさを持つものではありませんが、普段は日常に隠れているこの世の美の煌めきに気付かされてハッとなる、人生の歩みと同じように確かな実体を感じさせる安心感に満ちた美でした。
どうかな?と思いつつ劇場に足を運びましたが、思ったよりも秀作でした。
一つとして高い建物の無い済州島の広い広い空と海が殊の外印象的でした。
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