「シナリオは良いだけにメインキャストの声優が惜しい」この本を盗む者は SevenColorさんの映画レビュー(感想・評価)
シナリオは良いだけにメインキャストの声優が惜しい
気になる声優が出演していたため、本作を鑑賞しました。そのため、映画の内容そのものに強い関心があったというわけではなかったのですが、本作も、近年よく見られる「俳優・女優を前面に押し出すタイプ」のアニメ映画で、いわゆる売り出し中の女優が主演声優を務めています。
その結果については言うまでもありませんが、正直なところ、メインキャラの演技は耳に耐えないレベルです。はっきり言って、出来はかなり厳しいと言わざるを得ません。
一方で、それを支える声優陣は非常に豪華です。
東山奈央さん、諏訪部順一さん、伊藤静さん(以下略)といった実力派が揃っているため、その落差がより一層際立ち、結果としてメインキャストの演技の粗さだけが強調される形になってしまっています。
それにしても、映画アニメ業界はいつになったら「声の仕事は声のプロに任せるべきだ」という、ごく当たり前の事実に気づくのでしょうかと改めて感じた作品でした。
そんな中、本作における唯一の救いとなっているのが、脚本に中西やすひろさんを起用した点でしょうか。
中西さんといえば、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』、『かぐや様は告らせたい』、『山田くんとLv999の恋をする』、『地縛少年花子くん』シリーズ、『太陽よりも眩しい星』など、人間関係の濃密な描写に定評のある脚本家です。その中西さんの脚本によって、本作はかなり救われていると感じました。
以下は、シナリオ面のみに焦点を当てた感想です。
物語は、200冊の本を盗まれたことをきっかけに、きつねと契約し、本に呪いをかけた「たまき」と、その事情を知らぬまま、自然と呪いに立ち向かう「深冬」の物語となっていて、内容的には、『不思議の国のアリス』や『ガリバー旅行記』といった作品を彷彿とさせる構造になっています。
父・あゆむが書いた小説の世界にダイブし、その物語の中で本を取り戻して現世へ帰還するという筋立てですが、この手の作品はスピード感やテンポが欠けると途端に退屈になりがちの中、中西さんの構成力と脚本力が存分に発揮されており、テンポよく物語が進むため、最後まで比較的ストレスなく鑑賞できましたし、物語への没入感も十分に感じられました。
終盤、深冬が自ら小説を書き、真白を再び復活させる展開では「また御倉の何らかの力?」と思わせておきながら、実はひるねが書いた本の物語だったというオチが用意されています。いわゆる夢オチ的な要素で使い古された手ですが、これはこれで納得感のある着地だったように思います。
となると、深冬も真白も架空の存在という事なのかな、と。
また、たまきが最後の本で暴走した際も、彼女がきつね(謎の男)と契約し、そのきつねが魂を喰らっている事を考えると、結末はほぼ負けが確定していましたので、その点も含め、シナリオに破綻がなかった点も良かったと思います。
とはいえ、話を元に戻すと、やはり最大の問題は声優キャスティングがおしいなという点です。真白はまだ許容範囲であるものの、深冬に関してはやはり厳しいと言わざるを得ません。
仮に、深冬役に市ノ瀬加那さん、真白役に長縄まりあさん、もしくは石見舞菜香さんあたりを起用していれば、作品全体の完成度は数倍に跳ね上がっていたと思います。
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