大統領暗殺裁判 16日間の真実のレビュー・感想・評価
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この時代に何が起きているのかを知らないとハードルが高すぎる内容だと思った
2025.8.26 字幕 イオンシネマ京都桂川
2024年の韓国映画(124分、G)
1979年に起きたパク・ヒョンヒ暗殺事件後に行われた軍事裁判を描いたヒューマンドラマ
監督はチュ・チャンミン
脚本はホ・ジュンソク
原題は『행복의 나라』、英題は『Land of Happiness』で、ともに「幸せの国」という意味
物語の舞台は、1979年の韓国・ソウル
中央情報局の局長キム・ヨンイル(ユ・ソンジュ)の命令のもと、秘書室のパク・テジュ大佐(イ・ソンギュン)と部下のハン・ホソク(イム・チョルヒョン)は、大統領の接宴所にて待機することになった
その後、銃声とともに計画は実行され、彼らはパク・ヒョンヒ大統領の暗殺に関わったことで逮捕されてしまう
そして、テジュのみが軍人だったために、軍法裁判にかけられることになった
イ・マンシク(ウヒョン)率いる弁護団は合計7名の弁護にあたることになったが、テジュの弁護は誰も引き受けたがらなかった
そこでマンシクの部下チョ・サンチョル(イ・ヒョンギュン)は「勝つためにはなんでもする男チョン・インフ(チョ・ジョンソク)に白羽の矢を立てた
インフは有名になれると思ってその弁護を引き受けることになったが、テジュは一般裁判ではなく、単審の軍法裁判にかけられることを望んでいた
映画は、一連のテジュの裁判を中心に描き、勝利にこだわるインフが「勝利よりも大事なもの」を得るという物語になっていた
その背景でサンドゥ率いる強硬派の暗躍があり、軍事クーデターが勃発する様子が描かれていく
参謀総長のチョン・ジヌ(イ・ウォンジュン)よりも鋭敏に動いたサンドゥがそれを成功させるのだが、その裏で弁護団が祝杯を上げているのが生々しい
このクーデターが起きたのが12月12日なので、暗殺事件が起きた10月26日からかなりの時間が経っている
邦題の副題である「16日間」というのが何を示すのかよくわからなかったが、最後の字幕にて「新軍部の圧力で判決はわずか16日後に下された」とあって、そこから無理やり拾ってきたのかな、と思った
人間関係を把握するのは大変だが、韓国語タイトルでググって、韓国語版ウィキを覗けば大体のことはわかる
人物相関図もそこにあるのだが、通常のブラウザ翻訳はできないので、Googleレンズ翻訳などをすれば良いのではないだろうか
大統領暗殺事件の真相が語られないのがモヤっとするものの、ほぼサンドゥが画策したという方向性で描いているので問題はないと思う
そこから権力を集中させ、邪魔な総長を内乱罪で逮捕するところまでが計画となっていて、弁護団はそう言った国の行末からはかなり遠いところにいることがわかる
だが、この距離感こそが、この時代における軍部と司法の距離感のように思えるので、それを踏まえた上で空気感の違いというものを堪能すれば良いのかな、と感じた
いずれにせよ、かなり重めの話となっていて、救いのない部分は大きいと思う
後半にかなりの脚色があるものの、ヴィランをヴィランっぽく演出する意図があったのだろう
インフは「自分がどんなに汚い人間だとしても人殺しはしない」とサンドゥに言うのだが、人を殺すために生きている軍人を相手に言っても響かないだろう
また、弁護士としてやるべきことをしても、結論ありきで進んでいく裁判は見ていて辛いものがある
そんな中でインフの訴えは最終弁論にて吐露されるのだが、その言葉を受けたテジュは最後の陳述である決断をする
そこで語られるのは、軍人としての誇りであり、暗躍する者とは違うと言うことを示していて、真の軍人とは何かということを盗聴器越しにサンドゥに突きつけたことで彼の本懐は成し遂げられたように思えた
【朴正熙大統領暗殺事件の裁判を軸に、全斗煥(役名は別)が12.12クーデーターにより軍事独裁政権を引き継ぎ暴走する様を描いた作品。自由民主主義、法の下の人権の平等の大切さを問いかける作品でもある。】
ー 2023年12月に早逝された韓国の若き名優、イ・ソンギュンさんに哀悼の意を表します。-
■1979年10月26日夜。
”いつものように”朴大統領がソウル特別市の宮井洞にあるKCIA所有の秘密宴会場で、歌手、女子大生モデルを招いて晩餐が行われていた際に、KCIAの金部長に拳銃で暗殺される。
そして、金の指示で軍人でもある秘書官パク・テジュ(イ・ソンギュン)等は、大統領の側近たちを殺害し、偶々別の宴会に来ていた陸軍参謀総長の鄭昇和大将と共に、車で会場を脱出する。その際に、行き先を運転手から聞かれた金部長が口ごもる間に、パク・テジュは咄嗟に南山のKCIA庁舎ではなく陸軍本部へ向かうように指示するのであった。
ー この辺りは「KCIA 南山の部長たち」で描かれている。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作では、チョン・インフ(チョ・ジョンソク)が属する人権派の弁護士チームの活動が描かれる。
だが、12.12クーデーターにより実験を握った全斗煥少将(役名は別だが、以降全斗煥として記す)の脅しにより、一名、又一名と離脱する中、チョン・インフは、特に軍人であるが故にたった一度の裁判で刑が確定するパクのために、公正な裁判を求めて全斗煥と戦う姿が熱いのである。
・チョン・インフが手土産を下げ、清廉潔白なるが故に16坪の貧しい坂の上にあるパクの小さな家を訪れるシーン。小さな娘が二人、チョンを警戒する中、彼は手土産を渡しパクの妻と話した後に、長女から蜜柑を一個貰うのである。
その時のチョンの表情。
”あれだけ地位が高いのに、質素な生活。だが、妻子から慕われているパクという男を信じよう。”
そして、彼はまず裁判で”軍人だから、一度の軍法裁判で刑が確定するのは人権に反している。”と主張するのである。そして、それが却下されると車の行き先を”南山のKCIA庁舎ではなく、陸軍本部へ向かうように指示”したパクの証言者(内乱罪適用は不当である事を証明するため)として、同乗していた陸軍参謀総長の鄭昇和大将を口説きに口説いて、漸く証言する事を納得させるのである。
・だが、全斗煥は、自らより地位の高い”軍人は政治に介入すべきではない”という思想の鄭昇和大将を敵視し、ナント部下を陸軍本部に乗り込ませ鄭昇和大将の部下を射殺し、彼を誘拐するのである。
■今作で全斗煥を演じたユ・ジェミョンが憎らしいほど尊大で、自らの権力欲を満たすためには手段を選ばない男を圧倒的な演技で見せている。
「ソウルの春」で全斗煥を演じたファンジョンミンも凄かったが、彼も禿げメイクはしていないが、悪人面が凄いのである。更には裁判を別の部屋でヘッドフォンで聞きながら、定期的に封筒に入ったメモを届けさせる(映画では、誰が送っているかは描かれない。)陰で全てを操る頭の良さも描かれている。
・鄭昇和大将の証言が得られなくなったチョン・インフは、夜のゴルフ場でゴルフを楽しむ全斗煥の前で土下座し、彼が打ったボールを何度も取りに行き、”頼むから、これ以上人を殺さないでくれ。”と涙を流しながら頼むシーンは、少し切なくもチョンの漢気を感じたモノである。
その後、チョンとパクが面会するシーン。チョンはパクの長女に貰った蜜柑を剥いてパクに差し出すのである。もう、彼が娘とは会えないと知っての事であろう、と思う。
そして、結審裁判で、パクが涙を堪えて言った言葉。
“第6師団に居た頃が一番良かった。妻の料理の匂いが流れ、子供達の声が聞こえて来る生活。何度も、第6師団に戻してくれ、と言ったのだが・・。”
その言葉を聞いた傍聴席にいた妻が泣き崩れる姿・・。
<そして、裁判でKCIAの金部長以下に対し、極刑が言い渡されテロップで”パクだけは金部長達より早く死刑が執行された”と流れるのである。
今作は、朴正熙大統領暗殺事件の裁判を軸に、全斗煥(役名は別)が12.12クーデーターにより軍事独裁政権を引き継ぎ暴走する様を描いた作品であり、自由民主主義、法の下の人権の大切さを問いかける作品でもある。>
不正義の16日間をどう観るか──韓国映画の覚悟と観客のリテラシー
韓国映画はつくづく歴史を題材にした物語化が上手い。本作もその系譜に連なる一本で、朴正熙暗殺から全斗煥クーデターまでの「わずか16日間」を描くことで、軍事独裁時代の歪んだ司法と政治権力のあり方を炙り出している。もっとも、ここで描かれるのは史実の再現ではなく、あくまで「史実に基づいたフィクション」である。
主役は実在の金載圭をモデルにした「パク・テジュ」、そして勝利至上主義の弁護士チョン・インフ。法廷で権力と対峙しながら、勝ち負けより正義に向き合う姿へと変化していく弁護士像は、実際の裁判記録を知る人間からすると脚色過多ではある。しかし、観客を物語に引き込む装置としては実に機能的で、韓国映画らしい人間ドラマの構築力に舌を巻く。
映像は抑制された色調と緊張感あるカメラワークで、軍法会議の不穏な空気をうまく可視化している。遺作となったイ・ソンギュンの静謐な演技は「敗者の尊厳」を体現し、冷酷な権力者チョン・サンドゥ(全斗煥モデル)を演じるユ・ジェミョンの怪演と鮮やかな対比を成す。俳優陣の力に支えられた重厚な作品だ。
一方で気になるのは、やはり史実との距離感だろう。非公開だった軍法裁判を「劇的な法廷ドラマ」として再構築したことは映画的成功だが、海外の観客にとっては「実際にこういう裁判があった」と誤解されかねない。韓国では現代史教育で共有されている事件なので文脈理解は容易だが、日本を含め国外では解説がないと「暗殺事件の詳細再現」と勘違いする危険は残る。
それでもなお、韓国映画が一貫して取り組んできた「記憶の掘り起こし」という文脈で本作を捉えるべきだろう。勝者が書き換える歴史に対し、敗者の視点から「正義とは何か」を問い直す。その姿勢自体が、この映画の最大の価値であり、韓国民主化の痛みを知らない世代にとっても、普遍的なテーマとして響くはずだ。
総じて、本作は「歴史映画」としての事実性を求めるより、「法と正義をめぐる寓話」として味わうべきだろう。そういう意味で、韓国映画の厚みと覚悟をまたひとつ見せつけられた作品だ。
少し前まで、韓国は混乱の中だった
裁判をめぐる話なので、行ったり来たり…という表現でいいのか分からないけれど
うまく行きそうになると、ひっくり返る
弁護士のチョン・インフと軍人のパク・テジュが、裁判が進むに連れて、気持ちが通じ合う様は昭和のおばちゃんは大好きな流れ。
他者を大切にし過ぎた神父だった父親のせいで、チョン弁護士はかなり苦労したけれど、やっぱり親の子だったのか。
街に戦車が走るのがクーデター…みたいなセリフがあった。お隣の韓国はほんの少し前までそんな時代だった。
だからこその強さなのか…日本ではここまで詳らかな映画はできてこないよなぁ。忖度の国だから。
だから韓国映画は好き。
エンドロールのテロップで、イン・ソンギュさんへの追悼のメッセージが流れた。本作が遺作とのこと。
この人の声、好きだったんだよな。
1番の悪人は誰⁉️
史実なら誰が描いても結果は同じですね。
非常に残念な結末。
こんな韓国映画は度々やってるけどデジャブ感はあるが毎回記憶がない。(笑)
あと、毎回この手の韓国映画は難しく本質のところが理解ができないが、今作は大まかなストーリーは分かったので面白かった。
主人公の弁護士は悪い人じゃなかったし頑張りましたね。
最後にのしあがった軍人(ユジェミョンとは気づかなかった。いつものメガネ、顔とは違った。髪ハゲてみえたし)は悪者なんだろうか?
全て持っていったね。嫌い。
あいつは大統領が殺されて良かったと思ってる?
もしくは、そもそもあいつが仕組んだ事?
暗殺の時の車に乗っていた四番目の偉い人(チョンジンフ)はあっさり捕まるし、あの後の彼はどうなったん?捕まったまんま?
色々と要約すると誰が大統領暗殺を目論み、誰が操られた人なのか、それとも暗殺により政治が動いたのか?
知りたくなった。
そしてどういう経緯で今の韓国になったのか。
韓国政治と歴史に興味がわいた映画でした。
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