劇場公開日 2025年7月11日

「カンニング、ダメ絶対!」BAD GENIUS バッド・ジーニアス おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 カンニング、ダメ絶対!

2025年7月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

驚く

■作品情報
2017年のタイ映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』をハリウッドでリメイクした作品。原題も『Bad Genius』。監督はJ・C・リーが務め、脚本はリー自身とジュリアス・オナーが担当。主要キャストには、主人公リンをカリーナ・リャン、バンクをジャバリ・バンクス、グレースをテイラー・ヒックソンが演じている。貧困を背景に、天才的な頭脳を持つ学生が大規模なカンニング計画に手を染めていくクライムスリラー。

■あらすじ
貧しい家庭に育ちながらもずば抜けた学業成績を誇る天才少女リンは、奨学金を得て名門高校に特待生として入学する。ある日、落第寸前の親友グレースを助けるため、リンは試験中に巧妙な方法で解答を教え、グレースを救う。この一件をきっかけに、グレースの恋人で富豪の息子であるパットは、リンの才能に目をつけ、高額な報酬と引き換えに劣等生たちのためのカンニングビジネスを持ちかける。リンの関与はしだいにエスカレートし、やがて彼女の計画は、世界規模の統一試験を舞台にした前代未聞のカンニング作戦へと発展していく。

■感想
公開4日目の平日の夜ということもあり、劇場でたった一人で鑑賞するという贅沢な時間を過ごさせてもらいました。客入りは芳しくないようですが、作品はなかなかおもしろかったです。

カンニングという行為は、学生であれば誰もが一度は「もしも見つからなければ…」と心を揺さぶられる悪魔の誘惑ではないでしょうか。私自身も恥ずかしながら思い当たることがあり、天才リンの仕掛ける巧妙かつ大胆な作戦が、しだいにエスカレートしていく様に、感心してしまいます。と同時に終始ドキドキが止まらず、いつ発覚するのかと、ハラハラしながら見守る感覚は、まさにスリリングです。

そんなカンニングのスリルだけでなく、リンと父親との関係、友人たちとの絆、良心の呵責、そして社会的な格差や移民問題といった重層的なテーマがテンポよく描かれており、物語に最後まで引き込まれます。単なる犯罪スリラーに終わらず、登場人物たちの内面的な葛藤や背景が描かれている点も本作の魅力となっています。

しかしながら、最初は純粋に友人を助けたいという気持ちから始まったリンが、あれよあれよという間に「闇落ち」していく過程には、なかなか共感しにくい部分があります。経済的に困窮しているという理由があるとはいえ、特待生として授業料を免除されている彼女が、そこまで悪事に手を染めるほど追い詰められているようには見えません。また、優しい父親に愛情深く育てられ、父親のために公立高校への進学を申し出るような一面もあったのに、母親との美しい思い出につながる大切なピアノをカンニングの手段として利用したことも、理解に苦しみます。それだけに、リンの行動原理に納得がいかないモヤモヤが残ります。

それでも、最終盤で彼女が漏らした「思いついてしまった方法を試してみたかった」という心情には、ストンと腑に落ちるものがあります。やはり彼女は、常識や倫理を超越した「天才」なのだと強く感じさせられます。ラストシーンは、一応の決着を見た形にはなっていますが、観客としてスッキリ爽快な気分になれるかというと、そこまでではない点が少し残念です。しかし、それがまた、この物語のリアリティや深みにも繋がっているのかもしれません。

おじゃる
ユメさんのコメント
2025年7月17日

これクライムスリラーだったんですね🤣ラスト直前、パパに犯罪を告白したあたりからスッキリさせてくれるのかと思いきや微妙なフェイドアウトでワタシのいた劇場を沈黙にさせてました〜

ユメ