「心にじんわりと沁みてくる」富士山と、コーヒーと、しあわせの数式 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
心にじんわりと沁みてくる
■ 作品情報
監督は中西健二。脚本はまなべゆきこ。主要キャストは豆原一成(JO1)、市毛良枝、酒井美紀、八木莉可子、長塚京三、市川笑三郎、福田歩汰)、藤田玲、星田英利。
■ ストーリー
母の仕事の都合で祖母の文子と同居することになった、大学生の拓磨は、亡くなった祖父・偉志の書斎で、文子宛の大学入学案内を見つける。それは、若い頃に学びの夢を諦めた文子への、偉志が遺したサプライズだった。当初戸惑った文子だが、やがて大学への入学を決意し、新たな学びの日々を謳歌し始める。一方、コーヒーに情熱を注ぐものの、自身の夢に自信が持てず、将来に迷いを抱える拓磨。生き生きと大学生活を送る文子と対照的に、彼は自身の進むべき道を見つけられずにいた。そんな二人を繋ぐのは、富士山を愛した偉志が手帳に残した、ある不思議な数式である。 この数式は、祖父の深い思いを秘め、お互い、そして家族を新たな人生の景色へと導くきっかけとなる。
■ 感想
予告編の温かい雰囲気に惹かれ、本作を鑑賞してきました。平日の夕方ということもあり、観客はまばらでしたが、おかげで作品の世界に静かに深く没入でき、周囲を気にすることなく涙を流すことができました。
夫を亡くした文子が再び前を向いて歩き出し、孫の拓磨は将来を真剣に考え始め、娘の綾は母と息子への態度を改めていく。それぞれの登場人物が自分自身を見つめ直し、成長していく姿が非常に丁寧に描かれています。
当初、三人の関係は少しぎくしゃくしていましたが、もともとそれは誰かが悪かったわけではありません。相手を思っての言動が、少しばかり言葉が足りなかったり、言い方が不器用だったりしたために、わかり合えなっただけなのだと思います。それに気づき、関係性を改めていく姿がとても自然で、観る者の心にじんわりと沁みてきます。
また、回想シーンで何度も登場する祖父・偉志の存在が、この物語に深い味わいを与えています。長塚京三さんの温かな眼差しと穏やかな微笑みを見るだけで、なんだか涙を誘われます。そして、ラストシーンで完全にとどめを刺されます。もう泣くしかありません!夫婦の深い愛に胸が熱くなります。
それにしても、拓磨は今どき珍しいぐらい本当に良い子です。でも、こんな素敵な祖父母と母親のもとで育ったのなら、それも当然だと納得させられます。彼を始め、文子も綾も、今回の出来事を通して多くのことを学んだように思います。本作は、「その気があれば、人生はいつでも、どこでも、誰からでも、ずっと学び続けられる」という大切なメッセージを伝えているような気がします。自分も「まだまだ人生の5合目」という気持ちで、過ごしていきたいと思います。
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