「数式を追うミステリーではなく、ホッコリ系のドラマなので気軽に足を運んでもOKですよ」富士山と、コーヒーと、しあわせの数式 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
数式を追うミステリーではなく、ホッコリ系のドラマなので気軽に足を運んでもOKですよ
2025.10.27 MOVIX京都
2025年の日本映画(100分、G)
原案は島田依史子の著書『信用はデパートでは売っていない 教え子とともに歩んだ女性の物語』
コーヒー好きの将来に迷う大学生が祖父母の人生にふれて自分の道に向き合う様子を描いたヒューマンドラマ
監督は中西健二
脚本はまなべゆきこ
物語の舞台は、都内某所
コーヒー店でアルバイトをしながら、こだわりのコーヒーを追求する大学生の拓磨(豆原一成)は、祖父・偉志(長塚京三)の死去によって、祖母・文子(市毛良枝)と一緒に住むことになった
母・綾(酒井美紀)はシングルマザーのキャリアウーマンで、海外出張のために家を離れることになっていた
夫を亡くしたばかりの母親が心配な綾は、見守り役も兼ねて拓磨を送ることになったのである
物語は、祖父母宅の家のWifi探しをしていた拓磨が、祖父の机から「大学の生涯カレッジの申込書」を見つけるところから動き出す
文子は申し込んだ覚えもなく、行く気もなかったのでキャンセルしようと言い出す
拓磨の大学だったこともあり、一緒に事務室に行くことになった
だが、そこで夫が書いた志望動機を見た文子は心変わりをするのである
文子は大学に行っておらず、そのために娘の綾には強く大学に行くことを望んでいた
その後、大学を卒業した綾は就職し、拓磨を授かるものの、紆余曲折を経て離婚へと至っている
これまでに幾度となく喧嘩を繰り返してきた文子と綾は反りが合わず、拓磨はその間に挟まれることが多かった
それゆえに文子と一緒に住むことに抵抗があったのだが、現実は想像していたものとは違っていた
彼女にコーヒーを入れたことで距離感が変わり、それが起点として、大学の友人や恋人・紗季(八木莉可子)、文子のカレッジ仲間たちと交流が広がっていく
そんな中で、拓磨自身も自分のやりたいことが具体的になっていくのである
映画では、大学在学中にコーヒー専門店を起業した清野蓮(藤田玲)、大学の創業者・島田依吏子(林花音)たちのエピソードが登場する
彼らは「自分の夢を叶えた人」として拓磨の前に登場し、それが彼自身の夢への一歩を推し進めていくことになる
成功者の法則などが登場しないが、清野は「夢にしがみついた」と言い、創業者は「自分の弱点克服のために夜詣でを行った」というエピソードが紹介される
そう言ったことを知る中で、琢磨は「自分の夢を叶えるために何をすべきか」というものを知っていく
当初は「夢のためにお金がいる」と考えて投資詐欺に引っかかったりもしていたが、このエピソードを挿入した割には「資金に関する具体的なこと」というものは出てこない
それゆえに不要なエピソードだったかな、と感じた
映画は、祖父の残した謎の数式をミステリー要素にしているが、あの数式をすぐに解けないのは不思議に思える
だが、他人の趣味に疎いのは普通のことで、さらにそこに誰も関心を寄せずに「富士山好きなんだね」で止まっているので仕方がないことだろう
故人との関わりが深かったとしても、その趣味まで共有している人は少ないもので、その不可侵があるからこそ夫婦仲がうまくいくということもある
それでも、晩年に募る後悔というものはあるので、無関心よりは共通の話題を作るために関わって行くことは無駄ではないのだろう
いずれにせよ、優しい映画でほっこりするタイプの作品で、観終わった後にコーヒーを飲みたくなる映画だった
個人的には豆を挽いてまで飲むという習慣はないものの、何かに対するこだわりを持つというのは良いことだと思う
好きを仕事にするべきかは何とも言えない部分があるが、仕事にしたことで嫌いになってしまうこともあるので要注意だろう
拓磨の場合は、コーヒーを自分で淹れて飲むことよりも、自分の淹れたコーヒーで誰かが幸せな顔をしていることに重きを置いているので、起業というのはあながち間違いではないと思う
今後も自分の思い通りにならないことは多いと思うが、それを打ち消すだけのこだわりがあれば、しがみつくこともできるのではないか、と感じた
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