劇場公開日 2025年10月25日

「全国の映画館で上映されて欲しい」女性の休日 Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 全国の映画館で上映されて欲しい

2025年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

当時の「女性の休日」に参加した人たちのインタビューや当時の映像、アニメーションを交えつつわかりやすく構成されている。この「女性の休日」について取り上げられた記事を何度か読んだことはあるが、本作が作られるまで、それを取り上げた映画がなかったことに驚いた。

祝日のサービスデーは満員の回もあり、女性が多いが男性の観客もそこそこ入っていた。
「男性を憎んでない。ただ少し変わって欲しいだけ」というポジティブなメッセージには男性も共感しやすい部分があるのではないだろうか。
「ストライキは共産主義的だ」と反対していた右派女性も取り入れるために「ストライキ」がダメなら「休日」ではどうか?と、妥協案を示す柔軟さも良い。
もっと多くの映画館で上映されて欲しいところだが、今は残念ながら東京ではシアタフォーラムでしか上映されていない。

アイスランドの女性達は、女性は農業組合には入れない、女性は男性より賃金が低い、女性が仕事を教えた新米の若い男性がすぐ女性の上司になる…など様々な不平等に声を上げ、女性の待遇は大幅に改善され、今では世界で最も男女平等が進んでいる国の一つとなっても、まだまだ男女の賃金格差はあるとして数年おきに「女性の休日」を行っている。彼女たちの前向きで不屈の精神が眩しく、同時に男女平等指数148位中118位である日本との格差に落ち込む。

日本でもアイスランドと同じように「女性の休日」(実際には休日ではなく明確にストライキだが…)が出来るだろうか。無理だろうなと半ば諦めの気持ちを覚える理由はいくつかある。

1. まず女性が参加を躊躇う。日本初の女性首相がフェミニズムの結果ではなく、右派の名誉男性的な女性であるのが今の日本である。「フェミニズムなんて言ってたら男にモテない」「男尊女卑とかいっても男を掌で転がしてる人も居るでしょ」と背中を撃ってくるコンプラ意識が昭和な女性も多い。

2. 理解ある上司が休ませてくれるどころか、「ストライキに参加するなら解雇や減給する」と雇用主から脅され、派遣や非正規など弱い立場の多くを占める女性は日々の糧を人質に取られて参加出来ない。上司が面白そうだと新聞で取り上げてくれるどころかストライキの翌日には職場に机がないかもしれない。

3. 子供を職場にいる夫に預けたところで、見よう見まねでおむつを替えるなど悪戦苦闘しながらも育児をする夫ならまだいいが「そうはいっても母親が面倒見るだろう」と子供を完全放置する父親が続出して、子供が事故で怪我をしたり最悪死ぬ。(アイスランドはいきなり乳幼児を夫に預けても少なくとも子供が怪我したり死ぬようなことにはならないだろうという信頼があるのだろう。それだけ信頼おける夫を持つ日本人女性がどれだけ居るのか…)

4. ↑の事態が容易に予想されるので子供を夫に預けられず、結局育児する羽目になるのでストライキに参加出来ない。「夫に預けても面倒見ないから」と息子を女湯や女子トイレに連れ込む男児ママが多く見られる日本である。(そもそもストライキの1日どころか、風呂やトイレの間ですら子供を預けられないようなクソな配偶者ならさっさと捨てたほうがいいし、そうでないと子供にも悪影響だと思うのだが…)家事育児しない夫の愚痴を吐きながら、夫が批判されるとすぐ「普段はいい人なんです」と『夫カバーしぐさ』する日本の女性たちには夫の仕事の妨害をしてまでストライキに行くなんて真似はとてもできないだろう。夫に預けようとしても「そんなことして俺の出世に響いたらどうする」と夫に脅されて泣き寝入りするのがオチだ。

5. 上記の1~4を乗り越えたところで、参加した女性達がミソジニー男性達に加害されるなどストライキが妨害される。これが大いにありそう。まずストライキへの参加を表明したところで白い目で見られるどころか嫌がらせを受けるのがオチだ。フェミニストが「フェミ」とミソジニー男性達から蔑称扱いされる日本である。ストライキに参加するのはアイスランドの何倍も勇気が要るだろう。

なんだか暗澹たる気持ちになってきたのでここらで締めるが、日本がアイスランド並みに男女平等になる前に人類が滅亡するか、少なくとも日本という国家が破綻する方に賭けたくなるくらいには日本の男尊女卑には絶望している。

Jax