「演奏しない動物までいるのかよ」ハンス・ジマー&フレンズ ダイアモンド・イン・ザ・デザート 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
演奏しない動物までいるのかよ
来日ライブに行ったので、この映画もそりゃ観る。2700円でも。
驚いたことに単なるライブの映画化ではない。曲の合間に映画と関係あるゲストとトークコーナーが入る。だけでなく、曲によってはわざわざイメージに合うシチュエーションでミュージシャン従えて新たな映像を撮っている。
最初の曲とかわざわざ砂漠に女のボーカルと大太鼓の男をポツンと立たせているし。
グラディエーターでは遺跡みたいな場所で古代ローマな格好して演奏している。しかもここの映像にはヤギみたいな動物まで映っている。わざわざ演奏するわけでもない動物がバンドのメンバーの後ろでひょっこりたたずんでいる。嘘だろ?そんなことまでやる金があるの?という驚き。
インターステラーの時のやたら綺麗なドームはドバイ万博会場らしいし、最後の曲インセプションのラストでハンスが鍵盤楽器叩いてる場所はブルジュ・アル・アラブの高層ビルの屋上らしいし、その金のかかり方にドバイマネーを感じた。
インタビューに出てくるメンバーがまた豪華で。
ビリー・アイリッシュとの対談で「自分は音楽の全てを知ったような顔をしている人間がいるが、そいつが知っているのは昨日までの音楽だ」みたなことをハンスが言っていてビリーと意気投合していた。
また、ティモシー・シャラメがやたらとハンス・ジマー曲に詳しく、賢い雰囲気を感じた。ようキャスティングされる人はやはり理由があるんだな。
ハンスはレコーディングの時に全ての楽器をやる、という感じの発言があり、驚く。さすがに全ての楽器を演奏できるという意味ではなく、全ての楽器を理解してコントロールするという感じの意味らしいが、まあ一流作曲家はそれくらいできるだろうな。
ブラッカイマーとの対談で、最初にパイレーツ・オブ・カリビアンの作曲は別の人に頼んでいたがうまくいかなかった。ハンスが一晩でパイレーツの曲を作ってこれが採用された、とのこと。
これだけ聞くとハンス天才じゃねえか、なんだが、追い詰められると力を発揮するということらしい。
ダークナイトのレコーディングに終了指示を出した話をクリストファー・ノーランがしていて、ノーラン監督が止めるまでに48回もレコーディングしていたことをハンスが話す。しかもまだアイデアがあったと。ハンスは監督に命がけで作曲してるんだ、と言っており、まあ才能ある人が命がけで頑張るからいい曲ができ、これだけ大規模なライブができるんだな、と納得ではある。
ハンスにライブ活動をすすめたうちの1人がファレル・ウィリアムスで、ファレルに感謝する場面が後半である。「一生裏方のままにはさせない」とまで言ったそうで、こう言われたのがハンス的にはとても嬉しかったのか、しきりに感謝していた。ファレルの返答が「鏡を置いただけさ」なのもオシャレ過ぎた。
ゼンデイヤとの対談でライオンキングの話になり。自分の娘にクレジットを見せたくでこの仕事を引き受けた、と話すハンス。しかし父親が死ぬ話だからなかなかすぐに取りかかれなかった。ハンスは6歳の時に自分の父親を亡くしており、父への鎮魂歌のつもりでライオンキングの曲を作った、とのこと。言われてみればこのライブにおけるライオンキングの後半は鎮魂歌感がある。
曲というか演奏はやはり、ワンダーウーマン、パイレーツ・オブ・カリビアン、ライオンキングが良かった。これはライブで聴いた時と同じ感想。
とにかく一流映画音楽作曲家とドバイマネーのすさまじいパワーを感じた。