「ブルース・スプリングスティーンの実像に違和感」スプリングスティーン 孤独のハイウェイ ゆみありさんの映画レビュー(感想・評価)
ブルース・スプリングスティーンの実像に違和感
ブルース・スプリングティーンと言えば「ダンシング・イン・ザ・ダーク」「明日なき暴走」「ハングリーハート」「ボーン・イン・ザ・USA」などのエネルギッシュでハイテンションなロックンロールナンバーを思い浮かべる。ギターを掻き鳴らしながら、あるいは軽快にステップを踏みながら歌い踊るライブ映像はエネルギッシュそのもの。それが僕にとってのブルース・スプリングスティーンなのである。しかし映画の中のブルースは違った。
「ハングリーハート」の大ヒットでスターへの階段を上り始めた若者ブルース。同じようなコンセプトの楽曲で一気にスターダムに上り詰めることを期待する周囲とは裏腹に、彼は次のアルバムのために内省的な歌を次から次へと作りその録音方法にも執拗に拘る。そこには僕の知っているロックンローラー、ブルース・スプリングスティーンの姿は皆無である。そしてロサンゼルスに移住し、まるで隠遁者のような生活を始める。一体何が起きたのか、理解が追いつかず僕は途方に暮れてしまった。これがあのブルース・スプリングスティーン?
考えてみればステージで見せるスターの姿はいわば虚像で、実像とのギャップに驚かされることはよくある。ブルースの場合、幼少期の両親との関係や長いこと鬱に苦しめられていた父から受け継いだ気質が影響していたのだろう。その辺りは丁寧に描かれていた。
ロックンロールスターの実像は僕のまったく知らないもので実に興味深いものだった。
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