劇場公開日 2025年11月14日

「「ザ・ボス」と呼ばれた彼の内面の苦しみに焦点を当てた一作」スプリングスティーン 孤独のハイウェイ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 「ザ・ボス」と呼ばれた彼の内面の苦しみに焦点を当てた一作

2025年11月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ブルース・スプリングスティーンと言えば、骨太な楽曲と数時間のライブをぶっ通しで演奏する頑強さで「ザ・ボス」とも呼ばれており、間違いなくロックの歴史に名前を刻むであろう人物の一人です。

本作はそんな彼の自伝、というよりも、名盤として評価を受けている1982年のアルバム『ネブラスカ』の制作時期に焦点を当てて、そこに時折彼の少年時代の回想場面が入る、という構成の伝記ドラマです。

『ネブラスカ』制作と並行して恋人フェイ(オデッサ・ヤングが人間味たっぷりに演じているけど、本作では数少ない架空の登場人物)との絆を描き、少年時代の回想場面では彼と彼の父親が複雑な関係にあったことを明らかにしていきます。

このように本作は、もちろん彼の楽曲に酔いしれる(本作のために楽器の演奏や歌唱のトレーニングを積んだというジェレミー・アレン・ホワイトが熱演)場面も含むものの、彼が『ネブラスカ』制作中にどんどん精神状態が悪化していく過程に明らかな力点を置いています。

そのため「スプリングスティーンのライブをスクリーンで楽しみたい!」という人には意外な鑑賞感となるかも知れませんが、あれほど気骨があって、精力的な人物が、一方で長年鬱病に苦しんでいた、と知ることは、同様の精神的な苦しみを抱えている人に希望をもたらすのでは、と感じました。

なおスプリングスティーン自身は2016年ごろに長年うつ状態にあることを公表しており、その後も精力的に音楽活動に取り組んでいます。こういった、ファンにも自分自身についても真摯なところが「ザ・ボス」と呼ばれる所以なんだな、と改めて納得させてくれる一作でした!

鑑賞後は彼の楽曲、特に『ネブラスカ』と、その影の双子ともいえる『Born in the U.S.A.』(1984)を、歌詞を嚙み締めつつ聴きたくなること間違いなしです。

yui
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