水の中で深呼吸のレビュー・感想・評価
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青春映画の名作がまた1本
現代的であり、その時代にしかない様々な問題をはらんでいながらも、全てを飲み込む、痛々しくもどこか爽やかさのある、素晴らしい青春映画だった。
「手を繋ぐ」とその相手との相性が分かると聞いた事がある。この映画は「手を繋ぐ」という行為で、人を繋いでいる。
2年と1年の水泳対決とそれぞれの入り組んだ恋模様が同列に描かれるのも面白い。
主演の石川瑠華さんはまだまだ高校1年役でも違和感のないのもスゴいが、何より「猿楽町で会いましょう」とも「うみべの女の子」とも、また全然違う顔を見せている。言われないと分からないくらいだ。しかし、透明感と存在感は変わらない。
他の出演者も素晴らしいが、中でも倉田萌衣さんが市川実日子さんを思わす雰囲気のお芝居で印象に残った。
#水の中で深呼吸
#石川瑠華 さん
#倉田萌衣 さん
主題は評価するものの、ストーリー設定にもやもやする点も
葵の持つ微妙な感情を描くこと、そしてはっきりと描ききらないことが本作品の主題であり、評価できるポイントでした。
ただ、そういう機微を表現するにしては、葵が好意を寄せているひとりである昌樹のクズさ加減が少々強すぎではないか、と個人的には思ってしまった。
恋人関係ではないのかもしれないが、葵の家に時々遊びに来て、葵の母も好感を持たれているくらいの関係ではあるようなので、もう少し節操を持っていてもいいのでは。あれだと、昌樹くんが他の女子とデートしてたよと、葵の母に早々に見つかってしまっていそうなものだが。
あと気になったのは、葵たち1年生が上級生と水泳のリレー勝負の条件。
1年生側は、勝ったら上級生たちも一緒にプール掃除をしてくれるというメリットが生じるものの、上級生側は勝ってもなにもなし・現状維持で特にメリットなしというのは。
下級生への嫌がらせも厭わないあの上級生たちが「うちらが勝ったらおまえら1年生は何してくれるの」くらいのことは言いそうなものだが。1年生たちの天狗の鼻を折ることができればそれで良しという、教育・愛情的な配慮をしてあげた、ということなのか(ちょっと考えにくいですが)。
出演者さんの多い映画でしたが、作中ではあまり活躍しないままエンディングになってしまった役者さんもいて、ストーリー展開上やむを得なかったのだろうとは思いますが、もったいなく思いました。
いつかは自由に新呼吸
粗筋から、もう少し両性愛の悩みにフォーカスするかと思ったのだけど…
アバンタイトルの雰囲気がよく、上級生とのトラブルまでもスムーズ。
でもこれ、上級生側にメリットないし、メドレーでやることにも3週間も先なことにも何の理由もないよね。
そこにヤリ〇ンが絡んでくるのだけど、あんなにモテる理由が分からないし、狭いコミュニティで手を出し過ぎ。
バカだけどアホじゃない梨花の感じとか、一歩引いて見てくれる胡桃の存在感とかはバランスいい。
日菜の内面はあまり描かれないが、立ち位置的にミステリアスにして正解。
でもなんか、葵の揺らぎよりヤリチ〇問題の方が前に出ちゃってるんだよなぁ。
勝負直前に梨花が抜けちゃうし、意味深な視線こそあったけど急遽加入したオカッパには見せ場もナシ。
それどころか、定番の“実はいい人”な部長な漢気によって葵以外は茶番扱いに…
(タイムを元に金魚のフン達が叱られはするけど)
ってか、顧問立ち会いで何やらせてんだよ。
勝負後は有り得んくらい環境が改善され、被害者の会によるビンタメドレーでスッキリ?
(日菜のビンタが掌底気味で笑う)
昌樹は告白しないし、葵の気持ちも保留の先延ばしなのでモヤモヤしたまま終わった。
テーマ的な部分は部長がいきなり台詞で語り出しちゃうし、男子同士のカップルも半端。
アバンでは一つだけだった気泡が、最後は無数に出てくるという変化の描写は上手かったけど。
個人的には胡桃の最後のデレが一番好き。
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