劇場公開日 2025年11月21日

「「謎ルール」に「謎マナー」。ニッポン国中、謎だらけ」金髪 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 「謎ルール」に「謎マナー」。ニッポン国中、謎だらけ

2025年11月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

難しい

生徒指導の教師から地毛の色を咎められ、
髪を黒に染めさせられたことで不登校になった女生徒の『家後』。

『板緑(白鳥玉季)』は件の生徒とは仲が特段に良かったわけではないが、
それがきっかけで疑問を持つようになり、
周囲を巻き込み、ある日髪を金髪に染めて登校、
校則の改定を要求する。

クラス担任の『市川(岩田剛典)』は対応を迫られるが、
事態が校内で閉じている間は短く、
やがては世間の耳目を集め、
遂には教育委員会やマスコミをも巻き込んだ騒動に発展する。

自分が卒業した中・高は比較的自由な校風で、
髪型や長さの規則も無かったし、
ましては靴下や下着の色の指定などとんでもないこと。

もっとも、体育教師による鉄拳制裁はあり、
たいしたことでもないのに頭を拳骨で殴られた記憶。

イマイマなら大問題も、
数十年前は世間的にも許容されていたのかも。

が、今にして思えば教師も人間で聖人君子には非ず。
生徒に対して好き嫌いの感情は当然湧くだろう。

ましてや当時の彼等・彼女等の年齢は三~五十代。
今の自分からしてみれば、
随分と幼い行動原理での対応だったと、
半ば憐れむような感情さえ覚える。

あっ!いかん。つい私怨を吐いてしまった。
それほど教師に対しては、良い記憶がほぼ無い(笑)。

本作では、いかにも日本らしい謎な風習が幾つも描かれ、
そこに日銭を稼ぐためセンセーショナリズムへと奔るSNSやネット、
定見のないマスコミのスタンスを混ぜ込み、
ブラックな笑いで満たす。

サービス残業過多で、現代的な「女工哀史」の教職員の日常や、
事なかれ主義の管理職、或いは日和見な市・県教委、
人気取りの発言を繰り返す時の政権など、
日々報道されているそのもの。

チャップリンの至言ではないけれど、
「クローズアップで見れば悲劇だが、
ロングショットで見れば喜劇」だ。

とは言え、表現が全体的に大人しく、
ノリが悪い構成。

同調圧力の強いこの国の姿をさらけ出す、
より強いエピソードも欲しかった。

もっとスラップスティックに寄せるとか、
思い切り皮肉を利かせる等の方向性も有ったのではとも感じる。

とりわけ主人公教師の物分かりが突然に良くなるのは不自然。
これを彼の成長の結果とするには、どうにも唐突に過ぎる。

終わり方についても同様で、
忘却の早い世情も併せ、
当事者もあっという間に過去の出来事にしてしまったのは
釈然としない。

なまじ前週に公開された、
同監督による〔君の顔では泣けない〕が超良作だったことが、
よりその思いを強くさせる。

ジュン一
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