「「不快感こそブラックコメディ」」金髪 かなさんの映画レビュー(感想・評価)
「不快感こそブラックコメディ」
映画を観ているときから62歳の私には、ジェネレーションギャップを感じ、不快感と不気味さしかありませんでした。
自分の意見を生徒にまっとうに表明できないで、本音はSNSにぶちまける30男の姿には不快感しかありません。決して「本気」「本音」を表現できない。生徒とも正面からぶつからず裏でSNSを利用してなんとかしようとする。この先生は「痛い」人なのですよね。リアルにこんな30男がはびこってわけではないでしょうね。
周りが金髪にするからなんとなく金髪にする中学生の態度は不気味です。自分の意志ではないから、学校から注意されたから、親から言われたら黒髪に戻す。
どれだけ年代が離れていても、教育委員会が校則をなくすと言い出し、総理大臣がひっくり返すというのはコメディだと思います。ここに社会の矛盾を突いた描写は賛同できます。
ただこの映画はブラックコメディですよね。今の時代の空気感が正直わかりません。SNSがどれだけ社会に浸透し他のメディアを信用していないのか。今やスマホ1台あれば事がすべてすむ時代になっているのでしょうか。
それでも、終幕近くに30男が最後まで映画館で映画を観たこと。中学生の少女にきちんと自分の意志を説明したことで、なんとなく安心しました。きっと彼女との関係性も変化するでしょう。
自我を貫いた少女は、ついに周囲を動かし校則を変えました。ただそこにヒーロー然とならないで、髪を黒髪に戻してもう高校進学のことを考えている生き方はクールでカッコイイです。
「痛い」30男の先生を見事に描写し、ジェネレーションギャップがある私に不快感と不気味さを抱かせたのは、ブラックコメディとしては上等ということでしょう。
坂下雄一郎監督は、「君の顔では泣けない」で見る者の心を揺さぶる作品を作り、この映画でブラックコメディを大胆に描写した幅の広さに今後も期待したいと思わせる監督さんです。
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