劇場公開日 2025年11月21日

「若手教師の本音と成長」金髪 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 若手教師の本音と成長

2025年11月22日
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鑑賞方法:映画館

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■ 作品情報
監督・脚本:坂下雄一郎。主要キャスト:岩田剛典、白鳥玉季、門脇麦、山田真歩、田村健太郎、内田慈。

■ ストーリー
職場の先輩教師に囲まれる中、いまだ大人になりきれない中学校教師・市川。ある日、彼の担任クラスの生徒数十人が、校則への抗議として髪を金髪に染めて登校してきた。この前代未聞の「金髪デモ」は学校を大混乱に陥れ、やがてネットニュースや教育委員会を巻き込む社会問題へと発展する。市川は、生徒たちから「なぜ金髪がいけないのか」と問われても、「校則だから」としか答えられず、交際中の恋人・赤坂からも日頃のいたらない言動を手厳しく指摘され疎遠となる。物語は、追い詰められた市川が事態を打開するために奔走し、生徒たちとの交流を通して成長していく姿をシニカルに描く。

■ 感想
そこまで期待していなかったのですが、なかなかおもしろかったです。コミカルに脚色されている部分はあるにせよ、学校の内情や若手教師のリアルな心情が巧みに描かれており、非常に興味深く鑑賞しました。特に、全編にわたる市川のモノローグは、まるで現代の若手教師が抱える本音や葛藤を代弁しているかのようで、深く共感する部分が多かったです。

一方で、自分の思いをしっかりと持ち、それをストレートに表現する板緑の姿がすばらしいです。ダメダメな市川と対照的で、白鳥玉季さんの演技と相まって抜群の破壊力で魅せてくれます。

この二人の対立から共闘の流れがおもしろく、内容的にはおよそあり得ないバカげた作戦もあるものの、しだいに自分を見つめ直していくような姿にどこかほっこりしてしまいます。一連の騒動を通して、市川は人としても教師としても少しだけ成長できたのではないかと思います。

それにしても、市川のダダ漏れの本音が、世の全ての教師に当てはまるとは思いたくないです。最初から夢も希望も理想もなく、ただ漫然と日々の業務をこなしているわけではなく、きっと誰もが教壇に立つ前は、大きな夢と理想を抱いていたはずです。多忙を極める日常業務に追われ、心身ともに疲弊していく中で、それらが少しずつ色褪せ、意識の片隅に追いやられていくのでしょう。でも、目の前の子どもたちと真摯に向き合い、そのキラキラした瞳に見つめられ、純粋な心に触れた時、教師の「やる気スイッチ」は驚くほど簡単に、そして力強く入るものだと思います。

近年、ブラック校則、わいせつ事案、体罰、不適切な指導など、学校現場はさまざまな批判に晒されています。本作は、そうした社会と学校の「ズレた常識」や、教師としての自覚を見つめ直すよいきっかけとなる作品だと感じます。学校現場で奮闘する先生方にもぜひ観ていただき、市川に共感しつつも、自身の職場や子どもたちに向き合う姿勢を振り返っていただきたいです。

おじゃる
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