「見る人の視点に立ってみると、もっと奥深いものが描けたように思いました」君の声を聴かせて Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
見る人の視点に立ってみると、もっと奥深いものが描けたように思いました
2025.10.1 字幕 TOHOシネマズ二条
2024年の韓国映画(109分、G)
リメイク元は台湾映画『聴説』
耳の聞こえない女性に恋をした青年を描いた恋愛映画
監督&脚本はチョ・ソンホ
原題は「청설」で「聴説」、英題は「Hear Me: Our Summer」で「聴かせて:私たちの夏」という意味
物語の舞台は、韓国のソウル
大学にて哲学科を専攻し無事に卒業したヨンジュン(ホン・ギョン)は、やりたいことがないままに、店の手伝いをさせられることになった
ヨンジュンの母ミジョン(チョン・ヘヨン)は宅配弁当屋を営んでいて、父インチョル(ヒョン・ビョンシク)も時間があれば手伝っていた
仕方なく配達をすることになったヨンジュンは、市民プールで練習をしている水泳チームに商品を届けることになった
ヨンジュンはそこで、選手のサポートをしている女性に心を奪われ、その後、彼女と話していた選手に声を掛けた
彼女は聴覚障害を持っているスイマーのガウル(キム・ミンジュ)で、お目当ての女性は彼女の姉ヨルム(ノ・ユンソ)だった
ある日のこと、街角でヨルムを見かけたヨンジュンは、彼女のバイクの修理を買ってでて、自分のバイクを彼女に貸すことになった
親友のジェジン(チョン・ヨンジュ)のバイク屋にそれを運んだヨンジュンは、修理が終わると新車同様にピカピカに磨き上げる
そして、返すことを口実にして会い、バイクの見返りに食事に誘うことができた
だが、それ以上関係が進展することもなく、ある日を境に、彼女の態度が一変してしまうのである
映画は、台湾映画『聴説』のリメイクで、そこまで決定的な改変はなされていない
ネタバレなしの方がラストで驚けると思うが、様々なシーンでヨルムが健常者であることがわかるように作られている
最終的に、ヨルムはCODAだったことがわかるのだが、それがわかるシーンはとても印象的だった
また、耳栓をして通りを歩くヨンジュンは、彼女の世界を感じようとしていた
そして、彼女の元に行って「告白」をするのだが、それを聴いていたヨルムは、その後も彼の手話に付き合っていた
両親に合った時に初めて声を出すのだが、その理由は「彼の家庭が聴覚障害者を受け入れるかどうか」を確かめたかったのかもしれない
その辺りがもっとクリアだと良いのだが、誤解が解けてしまうことで、障害者と健常者の恋という作品の流れが壊されてしまったように思う
結局のところ、双方の思い込みが恋愛を始めさせ、その発展を阻んできたのだが、大団円に思える展開でも「取り残されたもの」は多いように思う
それは、ガウルがヨンジュンが健常者であることを知らずに終わっていると言うところで、彼女が真相を知った時にどう思うかというものが抜け落ちているからのように感じた
いずれにせよ、ガウルからすれば姉は健常者なのに、恋愛の相手に聴覚障がい者(手話を使う人)を選んでいるのはなぜだろうと思うだろうし、そもそもガウルには「ヨンジュンのふり」が看過されていてもおかしくない
映画の中でヨンジュンのセリフで「聴覚障害者は見る」と言う言葉があるので、ガウルは普通よりもヨンジュンのことを見ると思う
彼女は健常者の姉と聾者の両親の違いをわかっていると思うので、なおのことヨンジュンのふりは見破れると思う
手話ができることと、聾者であることの乖離は相当あると思うので、そのあたりの深掘りがないのは残念だったように感じた
そして、姉妹の喧嘩のシーンで「ふり」が露見してしまう方が、ヨルムがヨンジュンを突き放す理由にもなり得たと思う
だが、妹の拒絶、ヨンジュンの嘘が重なってしまうと、あの告白だけで気持ちが戻るのは無理がある
なので、ヨルムがヨンジュンと向き合うには、ガウルの感じているものを明確にした方がより深い物語になったのではないか、と感じた
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