「人は分かり合えるはずがない」ミーツ・ザ・ワールド prishouさんの映画レビュー(感想・評価)
人は分かり合えるはずがない
かつて、人の心を研究し尽くした臨床心理学の大家・河合隼雄氏は「人の心など分かるはずがない」と言いました。
どんなに長年連れ添った夫婦でも、気心の知れた幼馴染でも、本当のところ、「分かり合える」ということはないのでしょう。
でも、時折「分かり合えた」と思える瞬間が、ある。それはしかし、儚いもので、決して「永遠」にはならない。
希死念慮を抱えるライは、「永遠」を夢見ていたのかな、と思います。
『ミーツ・ザ・ワールド』は、「分かり合えるはず」という儚い夢を追う人たちの物語です。
“腐女子”と“キャバ嬢”など歌舞伎町で生活する人々という、一見、接点がなさそうな人種が出会い、意気投合する。
それは、ただ一点「分かり合える」ことを夢見ているという共通点でつながったのではないかと思います。
それは人類共通の夢であり、決して果たされることはない夢。接点がなさそうな人種を出合わせることで、誰もが共感できる物語になる。
私たちは、臨床心理学者が「人の心など分かるはずがない」と言ったように、「分かり合えるはずなどない」(劇中では「同じ世界では生きられない」と表現されています)と知りながら、それでも一緒に生きていくことに儚い幸せを感じる生き物なのですね。
杉咲花と南琴奈など、一人ひとりが存在感ある素晴らしい演技で、分かり合えない中でも一緒に生きること(現実的にも、思い出の中にでも)の寂しさと喜びを感じさせる、心地良い作品でした。
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