「一番大事なのは、忘れるという能力ですよ。全部覚えとったらおかしくなるでしょ。」アフター・ザ・クエイク 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
一番大事なのは、忘れるという能力ですよ。全部覚えとったらおかしくなるでしょ。
数年前、『めくらやなぎと眠る女』というアニメ映画があって、ようするにこの映画はそれの実写版ってことかな。それにしちゃ、出来が良くない。アニメはどこか哲学的なセリフとストーリー展開をみせて、なにかしら自分の中に思慮が芽生えたのを覚えている。それに比べて、これはどうだ。製作がNHK。音楽が大友良英ってのがNHKらしいっちゃらしい。たしか少し前(か、昨年)に連続ドラマでやっていて、録っておいたデッキがオシャカになってしまって見ず終いだったのが悔しかったのだが、そのドラマの出来がこれだったのなら見なくてよかったと思った。
オムニバス的にいくつかのエピソードが続くが、どこにつながりを見出せばいいのか。ぶつ切りの各章を、どう消化して次を見ればいいのか。何が言いたいのかさっぱりわからない。トラウマ?、空っぽの中身?、影?、分身?、突然失ってしまう何か?、再生の物語?どうもブレていると思えた。
「あなたがいないということは僕がいない。そう、僕はあなたの影なんです」と言う。なるほど。もしかしたら、僕にも影(もう一人の自分)がいて、誰かにとってのカエルくんのように、僕にとっての何か/分身がいるかもと考えるのはどうだろう。それは、カエルくんのようなへんちくりんな姿をして現れるかも知れないし、もしかしたらもう、生存する一人の人間として僕の目の前に現れているのかもしれない。そうだ、つい先日「人は自分の鑑ですね」と僕に語りかけてきたあのオバサンが、そうだったのかとも思う。
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