劇場公開日 2025年8月1日

「言葉は呪(のろ)いか呪(まじな)いか」KNEECAP ニーキャップ ouosouさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 言葉は呪(のろ)いか呪(まじな)いか

2025年8月1日
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鑑賞方法:映画館

思い出したのは2つのこと。/1つは、モンゴルにおけるヒップホップ受容の研究について。モンゴルのシャーマニズム研究者である島村一平氏によると、近年、モンゴルではヒップホップが盛んであり、それはシャーマンの伝統によるところが大きいという。本作におけるアイルランド語(ゲール語)は、父に象徴される祖国の紛争や分断を引き継ぐのろいとなるものであり、その分断を生き抜くためのまじないでもある。そう言えば、モンゴルも社会主義と資本主義のぶつかり合うところで、表立った紛争こそないものの、揺らいでいる地ですよね。/もう一つは、映画『ぼくたちの哲学教室』のこと。この映画は、ベルファストで紛争によるトラウマの世代間連鎖に巻き込まれた子どもたちのために、哲学の知恵を伝授しようとする校長のドキュメンタリー。学校に教師のための筋トレルームがあり、心的に耐え難い困難が起こると、校長がルームにこもって筋トレする!困難をどのようにサバイブするか、怒りをどのように飼いならすかという話で、『ニーキャップ』では校長が筋トレするようにラップして尻を出す!/あと、他文化との付き合いみたいなことでいうと、日本の問題でもあるよね。先の選挙の結果を考えると、日本におけるマイノリティ排除はすでに進みつつあると考えた方がよいわけで。本作を見終わって、他に開いているお店がなく京都の一等観光地の天丼屋で遅めのランチをしたのだが、外国語しか分からない客にも店員は頑なに日本語しか話さない!こういうの、どう考えたらいいんだろうね。/みんないいが、DJプロヴィがチャーミングだった。オープニングから茶目っ気たっぷりに人を食う映画であった。

ouosou