劇場公開日 2025年7月25日

「ちょっと『エスタブライフ』っぽいけど、王道を突っ走る近未来「運び屋」アクション前編!」BULLET/BULLET 弾丸疾走編 じゃいさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ちょっと『エスタブライフ』っぽいけど、王道を突っ走る近未来「運び屋」アクション前編!

2025年7月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

まったく予備知識のない状態で視聴。
まあ、ふつうに面白かったかな。

ノリとしては、少年の成長譚というジャンプ風の王道展開をベースにしつつ、谷口悟朗の『エスタブライフ』や『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』のリメイクっぽいものを見せられている感覚というか(焼き直しとまではいわない)。
特に、顔の表示されるロボは『エスタブライフ』臭が強いとか。
あとは、ヒロインのキャラデザが『Gレコ』臭強いとか。
仲間のシロクマが『呪術廻戦』のパンダ先輩臭強いとか。

個人的には、『楽園追放』とか『エル・カザド』とか、チームでミッションを達成する系の古いアニメをいろいろ思い出しながら、懐かしい気分で観ていた感じ。
つい先月までTVアニメの『ギルティギア』でカーチェイスとかガンファイトやってたのに、今回の主人公の名前が「ギア」っていうとか、つい先週観てきたアニメ映画で、病気の親の薬を買うために掏摸を繰り返している少年(のちの上弦の参)の話を観たばかりだとか、まあ、いろいろと「既視感の多い」アニメなのはたしかではある。
そのぶん、「王道」の設定と展開で勝負しているってことなんだろうけど。

一番の問題は、1時間半の映画としては、起承転結の構成がまったくとれておらず、観ているうちにどんどん盛り下がっていって、中だるみ感を漂わせつつ終わっちゃうところだろうか。まあ、もともとは12話のTV放映用のアニメを前後編に再編集したその前編ということらしいので、これはもう致し方のないことなのだが……。

前半の、街を脱出するあたりのカーアクションがいちばん盛り上がるのだが、そのあとはどんどんイベントが減っていって、首都に入ってからはひたすらのんびりしたテイストに。このへんは、やっぱりちょっと違和感があったかも。
それから主人公のギア君については、子供向けアニメに異常興奮したり、唐突にめそめそ泣きだしたり、かなり茶番くさいシロクマとのやりとりを見せたりと、今ひとつ言動に関してついていけない部分が多かったような。急に興奮したり落ち込んだりして感情の起伏が激しく、当座の目標も常に揺れ動いていて、なかなか落ち着かないキャラクターという印象。
受けた仕事はやり抜きたいから頑張るのか。
頼んできたノアがかわいいから頑張るのか。
親方の病気を治したいから金が欲しいのか。
とにかく今の閉塞感のある状況から脱出したいのか。
そのあたりの「按分」がガチっと決まっていたら、もう少しは感情移入できる主人公になっていたかもしれない気がする。

― ― ― ―

●笑いのセンスが微妙に僕とはかみ合わせが悪くて、正直なことをいえば、ずっと観ながら「軽くすべってる」感覚があった。よく言えば「オフビート」なテイストなんだろうけど……笑わせる間合いも、起きる事件のぶっ飛びようも、全体の語り口も。全体にちょっとおちょくっていて、ちょっとずれている感じがした。
朴性厚監督のいろんなこだわりのつまった辛ラーメンの「袋麺」を用いた即席ラーメンの描写も、少しくどいというか、お仕着せがましいというか、あんまりうまそうじゃないというか……(笑)。

●主人公のギア君はいかにもジャンプっぽく「不殺」系のヒーローなのだが、一方でヒロインのノアちゃんはガンガン銃をぶっ放していて、間違いなく相手を殺している様子。そのへんのリアリティのバランスが良いんだか悪いんだか(ちなみに敵の頭領の周辺はちょっとしくじっただけでその場ですぐ処刑されてしまい死屍累々)。
「殺し屋」が山ほど攻めてくる(なんか『ピンク・パンサー3』(76)みたいw)わりに、「バトルでキャラが死んでOK」のノリの話なのか、「キャラはギャグ落ちで基本死なない」ノリの話なのか、いつまでたっても判然としないのも若干気になるところ。
ギア君たちは、車が何度も横転したり、銃を頭につきつけられたりと、それこそいつ実際に死んでいてもおかしくない状況を、「主人公」にのみ付与されたチート属性を発揮することでなんとか生き延びてるだけだからなあ。ノアも言う通り、「優秀」ってよりは「強運」なだけというか。

●ヒロインのノアにもう少しだけ、愛嬌というか、助けてあげたくなるような魅力が感じられたら、ずいぶんとミッションへの共感度も違ってきたんだろうけど。これだけヒロインがハイスペックだと、主人公たちの手を借りないといけない理由がイマイチ薄くなってしまうような。たとえば不二子ちゃんはルパン一味の「馴染」だから頼って来るわけで、フリの依頼人が主人公たちより一番強いという設定には、どこか違和感を感じざるを得ない。

●「地平線までぶっ走れ」というノリは、おそらくアメリカン・ニューシネマの傑作『バニシング・ポイント』(71)あたりからの影響があるのではないかと思われるが、他にもライアン・オニール主演の『ザ・ドライバー』(78)とか、リュック・ベッソン製作の『トランスポーター』(02)とか、この手の「運び屋」系映画全般が、監督は好きなんだろうね。

●個人的には、ひたすらシロクマを愛でるアニメだった。
「おまえ一度もおかしいと思わなかったのか? シロクマがしゃべるわけないだろ」
ごもっともです(笑)。

●全般的に、声の聴きとりにくいアニメだった気がしたが、僕だけだろうか?

●なんにせよ前半戦は、オープンエアでのハイスピードなカーチェイスや対殺し屋の肉弾戦バトルをメインに、水平方向に展開するアクションのヴァリエーションをいろいろと楽しませてくれた。
後半は、地下空間での上下動アクションがメインとなるのかな?(ちょうど『ダイ・ハード』→『ダイ・ハード2』の展開の逆ですね) 8月半ばの公開を楽しみにしています。

じゃい
uzさんのコメント
2025年7月28日

やっぱり『エスタブライフ』ですよね。笑
料理上手な人格にまで“袋のまま袋麺”を作らせる辛ラーメン推しは謎…
白クマと、口の悪いくぎゅやざーさんは楽しかったです。

uz
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