劇場公開日 2025年8月1日

「暗転ドーン封印」アンティル・ドーン Minaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 暗転ドーン封印

2025年11月3日
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PlayStationの原作ゲーム、「Until Down 惨劇の山荘」は、8人の男女が殺人鬼に襲われるというゲームで、定番ネタだがそのメンバーの中に犯人がいたり等の意外性を含んだストーリーかつクオリティの高いクエストや謎解きが話題となり、人気が高く最近リメイク版が発売されたばかりである。そんなゲーム原作において、1点不評だった部分があり、残虐シーンを明らかに不自然な方法で暗転させてしまうという日本版ならではの問題だった。そして世の中には"暗転ドーン"というパロディ用語が生まれたのである。

それを本作ではド正面から惨殺される若者らを描く上で、暗転を封印し、R-18指定の過激ホラーへと変貌した様だ。
そして、映画版の肝となるストーリーは、若者らが入った観光案内所で殺人鬼に殺され、死ぬ度にリセットされるというものだった。ある程度の記憶は引き継がれて、「ファイナル・デスティネーション」の"死の予兆"を見ているような感覚であろう。自分たちがそこから一晩生き残るにはどうしたら良いかというサバイバル戦となっていく。死ぬ度にスキルアップして殺人鬼を撃退するか、上手く交わすようになっていくのだが、トム・クルーズの「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の様な百戦錬磨の戦士までにはならずとも、死のループから脱出すべく奮闘する姿を描いているのだ。…だがそもそも原作では"ループ"たるものは存在せず、殺されたらまた殺される前に遡ってタイムリープという設定は、この手のゲームによくある"死んでもまた復活出来る"というのを生かしたのだろうか。それならばゲームの映画化というイメージが微妙に思えてくるが、恐らく普通に映像化すると本作は相当地味な作品になってしまうだろう。それをゲームのプレイヤーが何も考えずに繰り返し繰り返しプレイするという"ゲームをする側=プレイヤー"目線ではなしが進んでいくという構成で、斬新と言えば斬新かも知れない。

とうとう主人公らも残りのライフがごく僅かとなり、次やられたら終わりだという事が分かってから命の1つ1つをとても大切に扱う展開になったが、その時だけご都合主義的にラスボス戦にまで持ち込んだのは不自然だった。何十ループしている…つまり何十回も殺されている主人公らの心情があまり入って来ず、後半に来てサラッと流してしまった感があったのは勿体ない部分だが、冒頭からループに巻き込まれる展開も早く、限りある時間でやりたい事を詰め込んだようなものであり、エンターテインメントホラーとしては純粋に楽しむことが出来る。原作どうり未知の怪物、「ウェンディゴ」も登場し、鉱山跡地だったその場所との関係性も明らかとなる為、原作とはかけ離れたストーリーでも、それなりにすんなり入って来る印象だった。ゲーム版の猛者らはどう観るか気になるが、普通に映画作品としては中々見応えのある作品だった。

Mina