劇場公開日 2025年7月12日

「戦後80年 見るべき映画とはこの作品」黒川の女たち 町谷東光さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 戦後80年 見るべき映画とはこの作品

2025年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

仕事が休みだった平日。自宅から地下鉄に乗って映画の上映館がある渋谷に向かう。
電車の席に座ると、目の前になかなか素敵なマダムが一人。年齢は50過ぎか。僕よりは若いだろう。
その彼女をチラリと見て、ぼくは渋谷に向かう30分、電車に揺られた。
で、映画館に着き、上映までしばらく待っていたら、そのマダムが連れと一緒に隣にいた。ちょっとびっくりした。まあ、それはこの映画とは無関係の話。
この手のドキュメンタリーを見る人って、どういう人なんだろう。日本の戦争犯罪、戦争責任とかに関心のある「左」の人だろうか。きっとそうだろうな。
平日の昼間、予想外に客は入っていた、3割弱はいたかな。でも、ほとんどが60、70代の男女だった。僕もそのひとりだが。

ドキュメンタリー映画である。内容的には過去にテレビで放送されたり、ノンフィクションとして出版化もされたことである。新事実があるわけではない。
過去にNHKなどで放送されたものに比べると、彼女らの深刻な体験についてはマイルドな伝え方になっている、と感じた。
ただ、「性接待」を強要された人たちの証言だけでなく、戦後生まれの人たちが彼女らとどうかかわったか、という今日的視点が織り込まれ、考えさせる内容になっていた。

テレビ朝日の社員ディレクターによる作品だが、ミニシアターでの上映だけでなく、広くテレビでも見られてほしい内容だと思った。

にしても、彼女らのことを書いた「碑文」が参政党やら維新やら保守党やらの極右、歴史修正主義者らにペンキでもかけられないか、なんてことがなければいいけど。

映画「国宝」のレビューが、僕が書いた1本を含めて1500を超えているにのに比べると、本作はたったの15本のレビューしかない。
戦後80年。歴史を知り、そして考えないといけないのである。
せめて50、60のレビューがついてほしいものだ、と思う。

地下鉄の中で見た、あのマダムは映画を見て、どう思ったかな…。

町谷東光