劇場公開日 2025年8月22日

「画角をぶち壊すタローマンの活躍には、思わずエールを送りたくなる」大長編 タローマン 万博大爆発 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 画角をぶち壊すタローマンの活躍には、思わずエールを送りたくなる

2025年8月23日
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「1970年代に公開された映画」に見せかけるために、敢えて画質や音質(台詞はすべて吹き替え!)を悪くした上に、ノイズまで入れている芸の細かさが嬉しくなる。
着ぐるみやミニチュアを主体とした特撮も、わざとピアノ線を見せることでチープさを醸し出しているだけでなく、手書きの光線で爆発を表現しているなど、「ウルトラマン」の円谷プロよりも、「スペクトルマン」のピープロの特撮に寄せていると思われるところも心憎い。
何よりも、1970年代に想像されていた2025年の未来世界が、「鉄腕アトム」のそれのように具現化されていて、レトロフューチャーな世界観の構築という点では、先日の「ファンタスティック4」にも引けを取らないのではないだろうか?
その未来都市が、「秩序と常識」だけに支配されたディストピアとして描かれているのも面白いし、それによって、デタラメな奇獣とデタラメなタローマンが戦っていたテレビシリーズよりも、「デタラメさのない世の中は窮屈で退屈だ」というメッセージが明確になっているように思う。
1970年の大阪万博と2025年の大阪・関西万博とを結び付ける着眼も巧みで、万博に対する岡本太郎の思いが胸に染みるし、敵と思われた原始同盟が実は味方だったり、そのリーダーに関してタイムトラベルものの定番の展開を取り入れていたりと、思いのほかストーリーも練り込まれている。
登場人物の中では、新キャラである常識人間のエランと、キャラクターが掘り下げられた風来坊が特に魅力的で、エランが自らを犠牲にするシーンでは、思わず胸が熱くなったし、残された「手」までタロー汁に投げ込まれてしまうくだりでは、声を上げて笑ってしまった。
敵のラスボスについては、彼が、過去に戻ってから、ああなってしまったとしか考えられないのだが、アイキャッチを挟んでのサプライズは楽しめたし、彼に埋め込まれた爆弾によって、そうなることが阻止されるという解釈で良いのだろう。
クライマックスは、突然、立体映画のブレた画面になったり(3Dメガネをかけたら、本当に立体に見えるのだろうか?)、ウルトラ兄弟のように8人のタローマンが現れたり、タローマンが画面の黒縁を取り払って武器にしたりと、アイデアに溢れたデタラメさが堪能できて、何だか幸せな気分になる。
特に、画面のアスペクト比が途中で変化する映画はこれまでにもあったし、実際、本作でも、1970年はスタンダードサイズで、2025年はシネマスコープて描かれているのだが、登場人物が力ずくでアスペクト比を変えた上に、黒い部分を物質化してしまうなどといった演出は前代未聞で、画期的な映像表現と言えるのではないだろうか?最近のシネコンでは、ビスタサイズよりも、上下を縁取りされたシネマスコープの方が、画面が小さくなるという「逆転現象」が生じることに、少なからず不満を抱いていただけに、タローマンが画角をぶち壊す様子には、「よくやってくれた!」と喝采を送りたくなった。
いずれにしても、デタラメな物語をチープな映像で表現するということに本気で取り組んだ、スタッフとキャストの熱意や創意工夫には、感動すら覚えてしまった。

tomato
tomatoさんのコメント
2025年8月24日

確かに、テレビシリーズでは、あまり存在感が無かった博士も、どアップの多い大活躍で、嬉しかったです。

tomato
トミーさんのコメント
2025年8月24日

博士の表情変えない解説も大分笑えましたね。透視メカのさりげない定番(H味)的使い方が良かったです。

トミー
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