Dear Stranger ディア・ストレンジャーのレビュー・感想・評価
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グイ・ルンメイ、美しい影
西島秀俊演じる賢治はニューヨークの大学で建築学を教えている。専門は廃墟。グイ・ルンメイ演じる妻のジェーンは、移民であった親の食料品店を手伝いながら人形劇の舞台監督をしている。二人には4歳になる男の子カイがいて一見幸せそうな家族に見えるが内情はなかなか複雑である。
賢治はテニュア・トラック5年目であり安定した身分とはいえない。ジェーンの人形劇もかなり畸形な人体表現に基づくアブストラクトな色彩を帯びたものであって一般にうけるものではないだろう。そもそも廃墟にしても人形劇にしても、どこか影を引きずっている印象がある。そしてジェーンが言う通り彼と彼女のオリジナルな言語は英語ではない。二人とも夫婦喧嘩が英語で通してしまえるほどの話者であるものの、基本、この街ではストレンジャーであり、それがそもそもの影を落としている。
映画が進むにつれて、さらに、カイの出生について秘密があることがだんだんわかってくる。それに関連して、この家族を襲う暴力と犯罪、そして警察による捜査。影が正体を現し牙を剥いて向かってくるのである。
正直、最後の30分間の進展はよく分からない。ここで行動しているのはほとんど賢治一人なのだが彼の出版発表会における講演や発言はよく理解できないしその後の賢治の行動や心境も共感できるようなできないような曖昧な感じである。
この映画で決定的に素晴らしいのはグイ・ルンメイの美しさ。彼女が尊敬しているといっているマギー・チャンのように光を当てれば光り輝く女優ではないが、グイ・ルンメイは光を当てることによって、濃く、美しい影をつくり出すことができる。影絵のように動き、深い余韻を残すことができる。だから、この作品のラストカットは彼女のアップで終わるのだがその表情はやはり具体的な怒りであるとか喜びではなく、何か諦念めいた影の深いアトモスフィアなのである。
廃墟
オンライン試写にて観賞。
薄氷を踏むようなギリギリの夫婦生活が息子が誘拐され崩壊していく。想いあっているからこそすれ違う2人の精神的な殴り合い。「美しく恐ろしい運命」が廃墟ならば、それに魅せられた賢治はその愛を貫いたのかもしれない。
序盤は仲良さそうに見えた3人家族だけど、賢治(西島秀俊)は廃墟に行っては現実逃避。ジェーン(グイ・ルンメイ)は自分の分身と言える人形に思いを馳せる。息子カイが誘拐されて夫婦は途方に暮れるんだけど、賢治は何やら犯人に心当たりがありそうで…そこから夫婦の秘密が明らかになるんですよね。
なんかもう、中盤から賢治が冷静さを欠いて狂いだしてきて…でも私はこういう西島さんが観たかったんだな〜って逆にテンションが上がりまして。でも、ずっと孤独でひとりだけ疎外感を感じていた賢治の気持ちを考えると本当に切ないよな…
真利子哲也監督作品って暴力的な描写が強い印象があるんだけど、今作は精神的にえぐられるような痛みがあった。余韻の残る映画でした。
大好きだけでは家族にはなれない
ジェーン役のグイ・ルンメイさんが凄すぎて。
人形と心身一体になって一人芝居してるシーンが忘れられない。
火のない所に煙は立たないとはいうけど、それぞれの不安の火種に、妄想が燃料を投下して暴走していくのが怖かった。
家族も自分以外は他人だもの。
信じたい。でも信じられない。
家族といえども自分以外は全員他人な訳で、心の中までは覗けないし支配もできないもんな。
異国で移民同士で結婚って、本当にすごくすごく大変だと思う。
余程相手の事好きじゃないと無理だよなあ。
そしてジェーンの男子の好みの振り幅の広さよ。エリートから問題児まで。
何を基準に好きになってるのか全然わからんかった。
アメリカでバリバリお仕事してる割に、賢治の言動が昭和の男子で、外国人と結婚しているのにそれで大丈夫なのか心配になったわ。
家族の在り方は、国によって違うかも知れないけど、基本、自分が一番心安らぐ場所であるべきものなので、それが揺らぐと色んな問題に発展するよなと思った。
親として夫として
諸行無常。
好きなタイプの作品だった。
父とは、母とは、パートナーとは。
夫婦だって所詮は他人。子は鎹とは言うけれど、子供が親にしてくれると言うのはある意味では真実。
では主人公のケンジやジェーンは?
理想の親になれている?家族にはなれている?夫婦にはなれている?
お互いを大切に想うがあまり本音が言えない。理想の風味像を追い求めるが故に嫌な話題には触れない。それがストレスとなり大きな歪みとなる。けど仕方がない。折り合いをつけることは悪いことじゃないし、皆んな神様みたいに出来た人間じゃない。自尊心も捨てられないし、被害妄想も感じてしまう。
その配慮と我慢が、息子のカイの失踪事件をきっかけに濁流を巻き起こしていく展開が興味深い。
カイを通してお互いを疑ったり確かめあったり。『子は鎹』にならないこともある。ポスターの夫婦の間にいるのはカイではなく人形だ。無表情の。
そう、この作品に出てくる人形は無表情。人形の気持ちは観客が解釈するもの。人形劇のシーンでは劇を観て笑うカイ、笑えないケンジ。人形を通じて己を表現し切って清々しいジェーン…と対比が切ない。
言語も効果的に使われていた。
喧嘩や独り言で感情が爆発するシーンはお互い中国語、日本語。
監督がトークセッションで言われていたけど、ジェーンは夫婦の少し深い問題、ケンジは表面的な問題を母国語で伝えていたのもまた興味深い。
個人的にジェーンの好きなシーンは英語だった。
バーの外でジェーンが『英語』で本音をぶつけるシーン。まるで母国語のように率直で心から湧き出た表現。あぁジェーンはちゃんと進んでいる。歩み寄っている。涙。
ケンジの印象的なシーンは日本語だった。車を運転しながら独り言を言うシーン。『あいつを見つけたかった…』ジェーンにも感情をもっと話せていたら間違った遠回りはしなかったかもしれない。
でも、ラストには明るい未来が見えた気がした。
警察官だって馬鹿じゃない信じたい。
虚偽の自首だってわかったよね?
一緒にここまで落ちたんだから、夫婦で登っていけるはず。
(メモ)
・ジェーンが自宅で人形操作の練習をするシーン。意味もわからず圧倒され、後で思えばストレスが最大限に溜まっていたことが痛いほど分かる。胸を締め付けられる。人形を通じた自分との対話。息を呑み惹き込まれた。
・ケンジが廃墟で拳銃打つシーン。一瞬明るくなった先には人形の幻影。ずっと囚われているケンジの苦悩が苦しい。辛い。
・ケンジが廃墟について語るシーンは全て重要。
・中心にいるようで、絆のようで、問題の核のようで、不在の存在でもあるカイ。まだ4歳。きっと自我が芽生えた未来は明るいはず。
・車の故障音、落書き、雨、雪、NYの住宅街、廃墟となった劇場や学校。人形。全てが登場人物の心の有り様にリンクして意味のある描写だった。
・あの人形劇観てみたい。
・ケンジの講義受けてみたい。
・一見難解なようでとても分かりやすい。
・警察絡みのシーンは所々テンポが悪く感じた。あと15分は短くまとまっていたら最高だった。
ひと昔前の火曜サスペンス劇場の、つまらない作品みたいな感じ
旦那が目を離した間に、息子が誘拐された。奥さんのイライラ爆発。
ところが、犯人は奥さんの元カレで、息子の実父。今度は旦那のイライラ爆発。
そして、その犯人が誰かに殺害されて見つかった・・・
ひと昔前の火曜サスペンス劇場にでもありそうな設定です。
でも、それだけ、話を広げておいて、その先の展開がつまらない。
廃墟や人形で旦那と奥さんの心情を表すのはいいけれど、
グダグダしたままで、旦那が事故って??? いや、そんな事故、無理でしょう。
どうやって、旦那がそこを通るってわかるのでしょうか? GPSで追跡されてたとか?
そして、待ち構えていたかのように刑事さん登場。なんですかね、それって???
西島秀俊さんは、いい役者だと思うけど、セリフが固いですね。舞台向きかも。
まして、今回は英語。日常会話も、セリフ感丸出しって感じでした。
わざと、母国語で会話出来ない、夫婦のイライラを強調していたのかもしれせんが・・・
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