「夫婦の危機、あるいは父性の危機?」Dear Stranger ディア・ストレンジャー sugsyuさんの映画レビュー(感想・評価)
夫婦の危機、あるいは父性の危機?
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女は人形劇、男は廃墟研究とそれぞれオブセッション(に近い仕事)を抱え、育児に専心できないでいる。そんなところに、子の誘拐事件が起きるが、事件は意外にあっさり解決して子どもも戻ってくるが…。ミステリ、というより心理劇の要素が大きく、象徴的な表現も多用され、なかなか核心にはたどり着かない語り口。傍から見ると、ぐちゃぐちゃ悩んでないでちゃんと親をやれ、と言いたくもなるが、そうは割り切れないのもまた人間。そうしたままならなさが、人形/廃墟に象徴されている…ということだろう。NYで暮らし、非母語でコミュニケートせざるを得ない中国・日本人カップルという設定も、安易な「心の通じ合い」的解決を許さず、もどかしい。ほぼ全編英語で通すが、西島秀俊が時折切羽詰まって漏らす日本語が、とても印象的(抑制が毀れた瞬間を見てしまった、ような)。銃や車の使い方も技巧的だが、やや暗喩が渋滞気味ではある。この主題なら1時間半くらいの上映時間に収めて欲しいところ。
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