「精神を蝕む見えない暴力に圧倒されっぱなし。」Dear Stranger ディア・ストレンジャー かもしださんの映画レビュー(感想・評価)
精神を蝕む見えない暴力に圧倒されっぱなし。
故障しかけた車から鳴り響く不快音、どんよりと曇った空、発色を抑えた照明など。
それらにより常に不安と恐怖が付き纏う作品で、派手な暴力シーンがないにも関わらず、圧倒的な暴力に怯えながら鑑賞しなければならない作品でした。
真っ向から直接的に暴力を描いて来た監督作品とは雰囲気が違うものの強盗や誘拐といった心を掻き乱す暴力がひとつの装置となって夫婦の関係を壊し、退廃させていく点では監督の色が出ている作品だと感じました。
ジム・オルークが奏でるジャズも素晴らしく、あの不穏な音色に不条理な映画を観ているような気分にも浸れました。
個人的には体感3時間くらいに感じる作品になってましたが、飽きるどころかずっと作品の中に引き摺り込まれるような錯覚さえ味わえました。
撮影環境も違うアメリカで時間のない中、妥協点を見出しながら撮ったとは思えない仕上がりにただただ感服してしまいました。
余談ですが、監督と主演の西島秀俊さんが感心していたグイ・ルンメイさんのパペット・マスターぶりが凄い!
小さな人形で喜びや悲しみ、そして怒りを表現するのですが、人形の僅かな首の動きや手の位置だけでそれらを見事に表現しています。
まるで生きているかのように見える人形に鳥肌が立ちました。
そうした点も含めて、何度でも鑑賞したくなる仕掛けが沢山あり、当分劇場通いがやめられそうもないです。
コメントする
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。