劇場公開日 2025年10月17日

「啖呵の切符の良さ」おーい、応為 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 啖呵の切符の良さ

2025年10月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

私個人としては、「よき邦画を観た」とめっちゃ満足できましたが……
『日日是好日』『MOTHER マザー』でも思ったけど、大森立嗣監督は(役者でもあるし)、かなりの邦画マニアかも。
説明セリフを極限まで減らし、行動や表情で感情を語らせる、 岡本喜八・小津安二郎・木下惠介・黒澤明など古典と化した巨匠の影響があちこちに。
これだけ説明を省くと、昨今の宣伝広告動画に釣られてくる層には、「わからん」ってなるんじゃないかと心配になりました。

原作は北斎の書簡や伝聞をまとめて為人を著した飯島虚心の伝記『葛飾北斎伝』と、杉浦日向子の漫画『百日紅』。
冒頭、離縁シーンから始まるが、元夫の名は出てこない適当な扱い(南沢等明だったかな?)。
原恵一監督のアニメ映画版『百日紅』と同様に、ちゃんと犬を拾って飼います。
犬がめちゃくちゃかわいい。

盲目の妹との『百日紅』で有名なエピソードもありましたが、作劇基本は応為の生き様そのものを描くこと。
なんで北斎の元にいたのか、絵師として何を求めていたのか、というのが主軸。

観終わって、「親子揃って『クリエーター』って素直じゃなくてめんどくせぇ」ってのと、応為がいわゆる女らしさは持っておらず「豪快でハンサムな絵師」であったということか。
性別を超えた「啖呵の切符の良さ」を考えたら、この配役は納得。

ただ、設定年齢相応の老けメイクをしていく北斎役の永瀬正敏に対して、かなり後年にやっと白髪が入る程度で加齢を感じさせない長澤まさみは、不老の妖怪か仙人。
おかげで年号表示は出るが、「出戻っていま何年経つ?」というのが、混乱してわからなくなってしまうというバグを、長澤に仕掛けられたように感じました。

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