劇場公開日 2025年10月17日

「意外に少ない浮世絵成分に拍子抜け」おーい、応為 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 意外に少ない浮世絵成分に拍子抜け

2025年10月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

浮世絵関連の映画と言えば、2年程に内野聖陽主演の「春画先生」と、春画を取り巻く現況を伝えたドキュメンタリーの「春の画 SHUNGA」が立て続けに公開されましたが、本作は稀代の浮世絵師・葛飾北斎の娘の応為を主人公として、長澤まさみが応為を演じる時代劇でした。

本作では、実際男勝りだったらしい応為の性格を強調していましたが、何せ長澤まさみが演じているので、ツンツルテンの着物を着ていても、かえって色気と美しさが勝ってしまうところが微妙と言えば微妙。また、”浮世絵師”の物語ではあるものの、”浮世絵”に触れる部分が案外と少なく、浮世絵好きの私としては、その点もちょっと欲求不満でした。”浮世絵”そのものに触れる部分が少なかったのは、「春画先生」の後半部でも同様でしたが、本作は全編に渡って”浮世絵”に触れる下りが少なかったのは、応為を演ずる長澤まさみにスポットを当てる作品だったからなのでしょうかね?

ただ人間・応為の物語だったとしても、彼女が何故父に倣って浮世絵師の道に進んだのかといったことや、彼女の浮世絵に対する心情とか姿勢などについてもあまり取り上げられていなかったので、人間・応為の輪郭がガラッパチであるとしか解せなかったのは残念ではありました。

あと、これはかなり些末なことですが、年代を紹介するテロップが西暦のみだったのも、ちょっと気になるところでした。せめて和暦を併記して貰った方が、もう少し時代劇的な雰囲気を醸し出せたのではないかと思うところでした。

応為の描き方や浮世絵成分の低さに不満の残る本作でしたが、俳優陣は中々でした。特に北斎を演じた永瀬正敏は、年を経るごとにそれらしくなっていき、自ら”画狂老人卍”と号した風格を漂わせていました。北斎の妻にして応為の母であることを演じた寺島しのぶも、時代劇が板についており、ピッタリの配役だったと思います。美人画、春画で名をはせた渓斎英泉役の髙橋海人も、必殺仕事人的な雰囲気ではありましたが、作風に見合ったキャラクター設定で、これはこれで合っていたように思えました。

肝心の応為役の長澤まさみについては、先にも述べたように美しすぎでした。それはそれで眼福にはなるものの、応為という人物を本当に伝えられているのか、イマイチしっくり来なかったのが、良きにつけ悪しきにつけ本作の特長だったと言えるのではと感じました。

そんな訳で、本作の評価は★3.4とします。

鶏
ノーキッキングさんのコメント
2025年10月23日

絵の扱いについても残念なシーンがあって、汚部屋でやたらと本紙を汚すのでハラハラしましたね。
書き損じでいっぱいの坂口安吾のポートレートを思い出しますが机の上だけはキレイでした。

ノーキッキング
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