「食べて寝て、画く、生きた先にあるもののお話」おーい、応為 r.さんの映画レビュー(感想・評価)
食べて寝て、画く、生きた先にあるもののお話
ある物語のように劇的に何が起こって解決して良かったねでもなく、恋心も描かれてはいるけれどそれがドキドキキュンキュンするものでもなく、北斎と応為がすごかったと言うお話でもないく、父と娘が生きたお話。
観る人が何を求めてるかで満足度が変わりそうだけど、好き嫌いが分かれるのはわかった上でこのスタイルな所が私は好き。
生きることに固執してないようで固執した、不器用な2人の物語が火や水、生活の音、虫の声や季節の移り変わりによってさらに鮮明鮮烈に感じさせて、受け取りかたによっては重くなりがちなお話を髙橋海人が演じる善次郎や映画の音楽が観る人との間を繋いでくれている感じがした。
わっとしたりわかりやすい盛り上がりがあるわけではないけれど、静かに涙が出てきて観終わったあと思い返してみると2人が愛おしく感じるお話だった。
先日3度目の鑑賞。
変わらず特に後半に掛けて引き込まれる映画。映像に映ってない部分の音が他の映画と比べると多い気がしてそこが自分中で余白を想像したくなる。
淡々と描かれてる気もするけど、北斎と言えばな引っ越しのシーンが定期的に挟まれてそれがコミカルにも感じられて北斎が可愛く見えたり、ぶっきらぼうな中に確かにお互いを思う気持ちや深い愛情が見えて、いつの時代も親は残していくことになるであろう子に幸せでいて欲しいと願うものなのだろうし、子は子で自分を思ってくれる親の側にいつまでも居たいと思うものだなと自分とお栄を重ねて涙が止まらなかった。
善次郎が亡くなったことを表すシーンも心に残るポイントだった。実際に亡くなるシーンを髙橋海人が演じてるわけではないのだけどそれまでの彼の演技があったからこそ、多くは描かれてない善次郎の人生を想像した。
観た人のお守りのような映画に、と言っていた言葉が一度目の鑑賞時には正直わからなかったのだけど三度観た今、この作品のことをきっと忘れないだろうなと思った。
