「【朗報】長澤まさみ様、更に演技の幅を拡げてしまう。あまり知られていない父と娘の絆を描いた良作時代劇。」おーい、応為 おつろくさんの映画レビュー(感想・評価)
【朗報】長澤まさみ様、更に演技の幅を拡げてしまう。あまり知られていない父と娘の絆を描いた良作時代劇。
自分は演者の力量を量る指標のひとつに「キレ芸」の良し悪しで判断していますが、冒頭の出戻ってきた長澤まさみ様のキレ芸のキレ味があまりよろしくないのです。あれれ~、おかしいぞ~(by江戸川コナン)と思ったのですが、実はこれが後半につながる伏線だったのです。
葛飾北斎の人となりはWikipediaでも詳しく説明されているので、ここで説明する必要はないですが、娘であり弟子でもある「お栄」については出自も不確かな部分が多く、作品として確かな物もエンドロールで一点だけ紹介されているくらいです。
で、主役のお栄を演じる長澤まさみ様ですが、着物は裾が短い着流しで男のように兵児帯を腰骨で結んでいます。一人称も「俺」で話し方もべらんめえ口調ですが、絵を描くために筆を執る指先や時々アップになる表情が実に色っぽい!
全体的に大きなヤマもオチもなく、ただ淡々と普段の父娘関係が綴られていきますが、他の作品だったら絶対に睡魔に襲われているはずなのに、美しいカメラワークと時代劇には合わないはずのジャズ調の挿入曲のおかげで、どんどん目が離せなく没入する事が出来ました。
卒寿で天寿を全うした葛飾北斎ですが、一生の中で九十回以上引っ越しを繰り返したのは有名な話で、江戸市中だけでなく霊峰富士の麓のあばら家で父と娘で暮らしたりもします。ここで北斎は自分の死期が近い事を悟り、お栄に自分のような老いぼれに構わず好きなことをやるために江戸に戻る事を勧めます。
ここで冒頭の伏線を回収する長澤まさみ様の見事なキレ芸が発動、「自分は自分のやりたいように生きているんだ、それはあんたと一緒に暮らして絵を描くこともそうなんだ」と泣きじゃくりながら心中を吐露するのです。つまり冒頭の弱めのキレ芸は出戻りの自分に対する呵責と、父を慕ってのキレ具合という事になります。
江戸市中に戻ってきた二人ですが、北斎は飼い犬のさくらの死や弟子の善次郎に先立たれたことによって、自分の生きている間は創作意欲を絶やさず作画に取り組むようになっていきます。ここで二人は今までの割長屋から少し大きめの屋敷で暮らすようになります。
お栄の出戻りから二十九年、白髪が目立つ歳になったお栄は相変わらず北斎の世話をしていますが、「飯はどうする?」と問いかけても北斎の返事がない事で様子を見に行くと、富士の麓で暮らしていた時の情景を描いた「富士越龍図」の前で事切れていたという、世界にも通じる稀代の浮世絵師の最期の描き方としては最適解だと思います。
余談ですが、東京テアトルの作品はスクリーンの縦横比がワイドではない(この作品では6:9位か)作品が多いのですが、意外とこの部分が大事で時代劇としての信憑性を増すことに繋がっていると思います。
共感&コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、父娘関係に絞って描いたのは正解だったように感じます。起伏の少ないストーリーでしたが、なんだかんだで見入ってしまいました。
コメントありがとうございました。そうなんですね。あの北斎の娘で自身も素晴らしい絵描きなのに、その後の消息が分からないって、寂しい事ですね。北斎の死後も絵を描いたんだろうかとか、応為の名前だけでも絵が売れたんだろうか、とか考えてしまいます。
興味深いご考察をありがとうございました。
「相互依存」という表現、とても腑に落ちました。血縁や教育によらず、自然と呼応し合う関係性——まさに北斎と応為のようですね。
そして、「薄い本」というところが、まさに美人画を得意とした葛飾応為らしさを感じさせて最高です。現代に転生しても、きっと同じテーマで筆をとっていたのではないでしょうか(笑
共感、コメントありがとうございます。
なるほど、自分、百日紅を読んだことがないもので…
そうなんですねぇ。
朝井まかてさんの著作読んで、ドラマを見たから、バイアスかかってるんでしょうね…
映画としての画の力は、すごく感じましたし、長澤まさみの応為もなかなかのもんだなぁと思ってます。
共感、コメント有難うございます!
応為の作品が当時、江戸の町民やお得意様?にどんなふうに評価されていたのか・・・捏造でもかまわないので(笑)、シナリオ化してもらいたかったです。同じ葛飾でも北斎じゃないからって足元みられて値切られていたと想像・・・。
おつろくさん。共感そしてコメントありがとうございます。
確かに応為の資料史実が少なく描くのが難しかったと思います。
が…画を描く情熱をもう少し見たかったな~と思いました。
共感、コメントありがとうございます。
そうですね。長澤まさみは良かったし、永瀬正敏も良かったとは思いますが、なんか山場もなく流れた感じがしました。
2人のファンなら満足かもしれませんが。
そんな感想でした。
今晩は。コメント有難うございます。
原作漫画を入れたりしている所が、読んでいない人はキツイかなと少し思いましたが、私は再後半の、応為が父を想う本音を吐くシーンが矢張り良かったですね。ではでは。
コメントありがとうございます。
そうなんですよ。特に冗長さを感じることはなかったんです。
でも、ふーんで終わりというか…長澤まさみをみせたいだけなのかなというか…内容に響くものが無かったです。
ありがとうございます!
有名なエピソードは散りばめられていると思うのですが、北斎が強烈すぎて、主役を喰っている感もありました。父娘の話なんだとあらためて感じました。
共感そしてコメントありがとうございます。
もう少し山場がほしい気もしますが、その分、
応為のミステリアスな魅力と一筋縄で行かない気性が、
浮き彫りになった気もしますね。
応為は200年前の女郎性にしては、とても辛辣で
へそ曲がり。
それが父親北斎との距離感だったのかも知れませんね。
父親って結構、目の上のたんこぶ、
ですけれど、歳を取ると逆転したりしますね。
おつろくさん
コメント、共感ありがとうございました。
風呂にそんなミスがあったとは勉強になりました。
本作では、アニメ映画「百日紅 〜Miss HOKUSAI」とも違う、ましてや田中泯さんの「HOKUSAI」や「八犬伝」の時のお栄とも違う、長澤まさみさんならではの応為が観れただけで満足でした。
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