「不器用な父娘が織りなす絆の物語」おーい、応為 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
不器用な父娘が織りなす絆の物語
■ 作品情報
飯島虚心の 「葛飾北斎伝」と杉浦日向子 の「百日紅」を原作に、江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の弟子であり娘でもあった葛飾応為の人生を描く。監督・脚本: 大森立嗣。主要キャスト: 長澤まさみ、永瀬正敏、髙橋海人、大谷亮平、篠井英介、奥野瑛太、寺島しのぶ。
■ ストーリー
お栄は、絵師の夫の作品を酷評したことが原因で離縁となり、父・葛飾北斎が暮らす長屋へ出戻る。その後、北斎から「応為」という絵師名を授かり、父娘であり師弟でもある関係で絵の道を歩み始める。北斎とお栄は互いの芸術を認め合う一方で、その強すぎる個性ゆえに、絵に対する姿勢や生き方で激しく衝突する。 女性が家庭に入ることが当然とされた江戸時代において、お栄が一人の絵師として生きる道を選び、自身の情熱と才能を追求する姿を描く。
■ 感想
この作品の予告を観るまで、恥ずかしながら葛飾応為という絵師の存在を全く知りませんでした。しかし、長澤まさみさんが応為を演じるとあって興味を抱き、公開初日に鑑賞してきました。
物語は、劇的な事件や感動的な展開が繰り広げられるわけではありません。しかし、そこかしこから滲み出る、不器用でぶっきらぼうながらも深く結びついた父娘の絆が、心に温かくほのぼのとした余韻を残してくれます。二人の間には、互いの才能を深く認め、心からリスペクトし合う姿勢が常に感じられます。父の背中を追いかけ、父に認められることに喜びを感じているであろう応為の心情が伝わってきて、時には威勢よく啖呵を切る姿でさえ、どこか愛らしく映ります。
正直なところ、彼女の実際の作品をほとんど知りませんでしたが、劇中に登場する応為の描いた絵からは、光と影を巧みに描写する写実的な美しさと、絵から溢れ出るような温かさを感じます。特に、作中で火事を「美しい」と感じる描写は印象的で、彼女が火の揺らぎや明るさ、そしてその熱に強い興味を抱いていたのではないかと、その絵から想像を掻き立てられます。本作に触れ、ぜひ彼女の他の作品も実際に見てみたくなりました。
そんな応為と激しくぶつかりながらも、そこに喜びを感じているかのような北斎を、永瀬正敏さんが見事に演じています。長澤まさみさん演じる応為との掛け合いは、見ていてとても心地よく、二人の関係性がいきいきと描かれています。
それにしても、あの世界的に有名な葛飾北斎が、あのような貧しい生活を送っていたこと、応為という娘がいたこと、彼女もまた類い稀な才を持つ絵師であったことなど、本作から多くのことを学ぶことができました。全体を通して、静かな感動と新たな発見に満ちた、貴重な鑑賞体験となりました。
共感ありがとうございます!
この作品を観るために、応為について予習をしたのですが、北斎に比べて応為は生没年不詳で、中には架空の人物ではないのかと書いてある資料まであったりするので、楽しく鑑賞できるか不安でしたが、応為の作画描写ではなくて「ゆったりとした」父娘関係に絞って描くことで、逆に応為の不鮮明な部分が観客各個人の脳内で良い感じに再現されたのではないかと思います。
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