劇場公開日 2025年10月10日

「登場人物も都市の一要素として」見はらし世代 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 登場人物も都市の一要素として

2025年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

渋谷をこういう静かな街として撮る人は珍しいかもしれない。本作は渋谷のMIYASHITA PARKの建設に関わった父親と、その息子の確執をめぐる物語が縦軸に、都市の変容の中で生きる人々を映し出すということを横軸に展開していく。
都市と人の関係が、登場人物と背景という感じじゃなくて、登場人物もまた都市の一部として描かれているような雰囲気があっていい。これは東京に行ったことある人なら感じたことあるのではないかという気がする。あまりにもたくさん人がいて、人がみな風景に見える的な感覚。この感覚が全編にみなぎっている。
そういう感覚を作るために、ロングショットとミドルショットが多用される。一目ではどれが主要登場人物かわからないように撮ってるようなショットもあって、人が街に溶け込んでいる感覚。そこから、人間が人間じゃなくなるような瞬間が感じられる時があって、だから、非人間的な幽霊要素が入り込んでも違和感がない。都市空間と霊性は意外と相性がいいということを喝破したのは見事だと思う。

杉本穂高