「再開発/再構築で得られるものと失われるもの」見はらし世代 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
再開発/再構築で得られるものと失われるもの
高校時代に最低でも週に6〜7日は過ごしていた渋谷も今ではすっかり様相が変化して迷子になりそうだし、自分が知っている宮下公園の姿は既に跡形もない。
街の風景も家族の在り方も、その年代によって異なる姿を見せ、どこで・誰の立場で見るかによってまったく違って見えてくる。
再開発によって得るものもあれば失うものもある。再開発によって恩恵を受ける人々も多数いるが、それによって被害を被るのは常に弱者であり、マイノリティーたちだ。親の不和で家族が解体されたときに犠牲になるのも常に子どもたちであるように。
仕事が軌道に乗り始めのめり込みがちな父親と、仕事より家族との時間を優先して欲しい母親の間の亀裂。せっかく別荘で休暇を過ごしに出かけてきたが、仕事の電話が入ってとんぼ返りする父親。そのしばらく後に母親が亡くなり(原因への言及はないが、精神的にかなり参っていた様子なので自死の可能性も高い)父親は自分のキャリアのためにシンガポールへ子ども達を置いて出ていく。親に捨てられたという思いと共に成長し、10年後には、無理して斜に構えながら社会を見て「家族」という概念に距離を置くことで寂しさを忘れようとする姉と、子どもがすねたまま成長した寂しさがゆえに直接的に怒りを露わにする弟となって父親と再会する。
そうでなくとも世知辛い世の中。黙々と文句を言わずに働く社員もいれば、理不尽さに我慢できずにとっとと仕事を辞める社員もいる。
そんな社会で過去を忘れて前向きに生きるのは薄情なのか?
でも、薄情にもとっとと仕事を辞めた社員は時折り沖縄旅行を楽しみながら颯爽と渋谷の街を電動キックボードのLUUPで駆け巡っている。
かつてのしがらみに拘泥せず、達観したかのように世の中を「見はらし」ながら生きていくのが、ひょっとすると、現代の若者の生き方なのかも知れない。
まだ20代の監督による新しい感覚の作品。東京(渋谷)の街を切りとる額縁構図なども多用した絵作りも(冗長だという意見もあるようだが)個人的には嫌いじゃない。
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