劇場公開日 2025年10月10日

「矛盾とすり替え」見はらし世代 NUMAYAさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 矛盾とすり替え

2025年10月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ファーストシーンから、映画のリズムに引き込まれました。
あらすじや主演もノーチェックで見たので、
ある違和感から、ものすごくゆっくりとじわじわズームしていき、家族の物語であることがわかる。
その後も要所要所に印象深い構図をしっかり残していき、後半へと再び繋がる流れが見事で唸りました!

スタイリッシュな建物や空間を意識させる構図が多いのは、建築家の物語だからかと思っていましたが、鑑賞後のトークで街を取り巻く群像劇でもあると知り、ラストにも納得がいきました。

この映画は世の中に溢れる矛盾とすり替えを突いてくる。
お祝い専用の花屋は殺伐としているし、
誰もが集える公園を作る為に人を排除する。
自分の仕事を正当化する為に、目的と手段のすり替えが必要なように
姉が一生許せないのは、父親ではなく自分自身なのだろう。
でも、、突き詰めた結果、母親のような極端な手段を選択してしまう危うさもあるから
すり替えられない時は、根本的な問題解決に向かう前に戦線離脱するのもアリ。
良くも悪くも物事から距離を置き、解像度を低く保つことに慣れてしまっている。
タイトルにはいろんな意味が込められていると思いますが、私はそんな風に捉えました。

街ってそれぞれ個性があって面白い。
人が街を形作っているようでいて、実は街が持つ個性に人が吸い寄せられている。
巨大な生命体のような気もします。
それで言うと都市計画は明らかに集まってほしいターゲット層ありきでデザインされている。
私が上京してきた頃は、飲んだ帰りに1人で宮下公園を歩くのは怖い感じだったので、MIYASHITA PARKの芝生がスタバ片手の若者で埋め尽くされている光景には驚きました。
金網で囲われたスゲボ場や運動施設を使うのには申し込みが必要だし、23時には閉まっちゃうし…きちんと管理が行き届いた施設ですね。
コンセプトの狙い通りの場所になるのか?
今後どんな風に成長していくのか楽しみです。

カンヌ監督週間出品とのことで、そもそも公開が楽しみな作品でしたが
PFF2020/2023入選の寺西涼監督が音楽を担当されているとのことで期待値UP!
話し声が聞こえるようなオープニングから面白くて興奮しましたが、中盤の展開で「だから寺西監督なのか!」と、ものすごく納得しました。
チャネルが合う瞬間と言いますか、寺西監督のテーマとリンクしている。

PFF2021入選の蘇鈺淳(スー・ユチュン)監督も少し出演されているとのことでしたが、ガッツリ印象深い役で驚きました。
違和感を口にすることで、誰の為に何をしているのか?目的と手段のすり替えを指摘する、とても重要な役どころでした。

素晴らしい才能が結集した『見はらし世代』
今後この世代が作る映画が楽しみです!

NUMAYA