愚か者の身分のレビュー・感想・評価
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キャスティングと構成が絶妙
契約の自由
三身一体の妙
登場人物のほぼほぼが、
なにがしかの悪事に手を染めている。
もっとも主人公たちの行為は
あまりにもさりげなく、誰の身近にもあることのように描かれるため、
観ている側は強く反応することはない。
が、結局は皆々が罰を受ける。
行いに対しての軽重はあるにしろ、
本作ではそれなりに因果律が働いている。
『タクヤ(北村匠海)』は歌舞伎町で
戸籍売買ビジネスを生業にする若者。
SNS上で女性になりすまし、
コンタクトして来た男たちに話しを持ち掛ける。
年下の『マモル(林裕太)』は『タクヤ』の誘いを受け、
同じビジネスに手を染める。
『タクヤ』に戸籍売買のやり方を教えたのは、
裏の便利屋として働く『梶谷(綾野剛)』。
もっとも彼は『タクヤ』を裏社会に引き入れたことに
後ろめたさを感じている。
若い二人が犯罪に手を染めた元凶は貧困。
わけても『マモル』のそれは、
ネグレクトも絡み生々しい。
ただ、犯している罪を除けば、
共に酒を呑んでバカ騒ぎをする、
イマドキの若者と何ら変わることはない。
作中では過去と今が、
静かな筆致で語られる。
主要な三人はどこかしら似ている。
目下の者を思いやる心や女性への優しさ、
旨いものには素直に感動するところを含めて。
実際は一つの人格を
物語り進行の都合上、
三つに分けている印象を受ける。
これだけ悪について分け入っているにもかかわらず、
暴力的なシーンは僅か。
一方で直截的に描写は無くても、
後の事態の方がより恐ろしい表現はあり。
静謐さと併せ、
本作の特徴かもしれない。
『タクヤ』が自身へ嫌疑が掛かることを予感したことから、
物語りは大きく動き出す。
出し抜く手立ては鮮やかも、
大きく我が身を損なう代償を支払う。
瞬間、三人が一体となるのだが、
最後のシーンを含め「もののあわれ」を感じずにはいられない。
狭い裏社会を支配する大人たちへの
若者の一種のレジスタンスにも見える。
原作は六年前に発表された小説も、
時代とのシンクロに驚かされる。
優れた作品には往々にしてあることだが。
一度犯してしまったら、
逮捕されるまで辞めることができない「闇バイト」の例は相似。
加えて、戸籍を買う側の理由が
つい最近に起きた補助教員による
教職員免許詐称事件と同じなのには背筋がうすら寒くなった。
言葉を選ばないなら…
親ガチャって言葉が頭の中に浮かびました。
子供の時の思いや考えって純粋だから親や置かれてる環境の事を全て受け入れて育つから大人になってもトラウマから抜け出せないんだよな…
好きでこんな生活してるんじゃないのに…
と、思ってる子供(青年)達多いんだろなと自分の人生も振り返り思いました。
「このままじゃいけない」と気付くのはほとんどの人で流されるのか、学習して抜け出す人は相当な覚悟と辛抱が必要で…
現代社会の濃い問題で考えさせられる作品でした。
未来の宝の子供たちが辛い思いをしなくていい社会になればいいなと思いました。
林裕太くんをあまり知らなかったのですがこの子凄い上手だなと感動しました。
主演映画増えそうですね♪楽しみです!
クズに
温かいご飯を食べる幸せ
ハラハラ、ドキドキ、痛々しい場面もあるけれど3人がそれぞれの思いを背負って生きる姿が胸熱でした。
人の温もりが恋しくなる♡誰かと一緒にご飯が食べたくなる♡大丈夫だよってムギュう~って丸ごと抱きしめたくなる♡そんな作品でした♡
家があり、ご飯を食べ、お風呂に入ると言う光景が描かれているけれどそれが当たり前ではなかった日常。
雨風凌げてご飯が食べられるそれだけでいいと言う若者・・・
若者にそんなことを言わせていいのか〜日本!
純粋無垢だから壊れやすく、染まりやすい。
子どもたちには夢を持って生きてほしい。
願いを込めてたくさんの方々に届きますように
とても良かった。目がえぐられて動かない北村くんの映像は衝撃。その北...
とても良かった。目がえぐられて動かない北村くんの映像は衝撃。その北村くんの目に綿を突っ込み、車の乗車席と後部席でやり取りする時の綾野の演技はすごい。
北村くんは、ヤクザな感じが板についてると同時に、朝ドラを経て、抑制があり、人を守る役柄が素晴らしかった。矢本くんも上手かった。
金歯のやつはただ気持ち悪かった。中国の臓器移植の話とか、材料にリアリティがあった。戸籍を売るというテーマも面白かった。
「光を失った者、光を諦めた者、そして光を追い続ける者」【追記あり】
【パンドラの箱】
新宿・歌舞伎町は全国一の繁華街、例えるなら「パンドラの箱」のような街。
闇で生きるしかなかった、タクヤ(北村匠海)
親に捨てられた少年、マモル(林裕太)
裏社会の運び屋、梶谷(綾野剛)
「愚か者」3人は、「パンドラの箱」から世の中に飛び出したありとあらゆる災いの中で、箱に最後に残された「希望」を求めて闇から抜け出そうともがきます。
─皆 美しい 皆 美しい
生きたいように生きたくて
人生 美しい 人生 美しい
そう思えればいいのに─
16歳のtuki.が歌う主題歌「人生讃歌 - Song of Life」のリフレインが、心の奥深く突き刺さる映画です。
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【北村匠海】
俳優としての北村匠海さんを初めて観た記憶は、『信長協奏曲』(TVドラマ版2014年/劇場版2016年)の森長可役、『君の膵臓を食べたい』(2017年)。
そして『東京リベンジャーズ』(2021年/2023年)の主人公「タケミチ」。
私の中の“俳優・北村匠海”と言えば、共演の今田美桜さんからいつも叱られて励まされているイメージ。
「タケミチくん、だったら頑張って!それで10年後も私と一緒にいて」(『東京リベンジャーズ』)
「タカシ、たっすいがーは、いかん!(弱々しい、元気がないのはダメ)」(「あんぱん」)
2025年は、映画初監督/企画/脚本『世界征服やめた』、朝ドラ初出演/W主演「あんぱん」、映画主演『悪い夏』、『金子差入店』、主演『愚か者の身分』。
バンドDISH//の音楽活動以外に、映像の仕事でも表現者として伸びしろを見せてくれました。
『愚か者の身分』のタクヤ(北村匠海)とマモル(林裕太)の関係は、本当の兄弟以上に暖かく、「タケミチ」が成長した「タクヤ」がそこにいました。
偶然ですが実際、北村匠海さんには林裕太さんと同い年の弟、林裕太さんには北村匠海さんと同い年の兄がいるそうです。
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【第30回釜山国際映画祭 (BIFF 2025)】
2025年9月17日〜9月26日開催。“アジアのカンヌ”、アジア最大級の映画祭。今年の公式上映作品は241本、日本からは24本が出品。
今年新設されたコンペティション部門には、『旅と日々』(三宅唱監督)と『愚か者の身分』(永田琴監督)が選出されていました。
映画祭最終日、『愚か者の身分』の北村匠海さん&林裕太さん&綾野剛さんが、3人揃って最優秀俳優賞(The Best Actor Award)を受賞したニュースに驚きました。
北村匠海さんと綾野剛さんは、初日のレッドカーペットセレモニーで帰国。9月18日のワールドプレミアと9月26日の授賞式は、現地に残っていた林裕太さんが代表して登壇。
「選択肢のない人が愚かなのか、それとも選択肢を確保しないその環境が、世の中が愚かなのか。」
「ただ、この映画において大切なことは、生きようとすることは決して愚かな選択肢ではないということです。」
「たとえ大きな夢や、何か大きな意義を見出さなくても、自分を支えてくれる誰ががいるなら、ここに生きる意味が大いにあるということだと僕は思っています。」
「それを教えてくれたのがこの映画であり、今日来られなかった北村匠海さん、綾野剛さんです。」
「今日のこの特別な瞬間を、この特別な感情を、日本に帰って3人で分かち合いたいなと思います。」
マモルのスピーチ、良かったね。
タクヤと梶谷も、東京から見守ってたよ。
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【10月28日追記】
原作・西尾潤さんのインタビューより。
「小説の中では3人は誰も死んでいないので、いつかスピンオフを書きたいとは思っていたんですが。
映画が完成して初号試写を観たら、映像の力を改めて感じて、彼らの続編を書きたいという気持ちが強くなっていきました。」
タクヤ・マモル・梶谷、3人の3年後の“未来”を書いた続編「愚か者の疾走」が、11月11日に出版されます。
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【11月22日追記】
11月21日、レイトショーで再鑑賞。公開5週目の金曜夜、都内のレイトショーはほぼ満席。
1回目の映画鑑賞後に、原作「愚か者の身分」と続編「愚か者の疾走」(3人の3年後)を読んでの2回目は、オープニングのタイトルから涙が止まりませんでした。
劇場に多かったタクヤ&マモル世代の男の人たちに、感想を聞いてみたい思いで帰宅してXをのぞいたら、この映画の感想が劇中の川のようにキラキラと流れていました。
公開5週目でほぼ上映終了の予定ですが、これから上映が決定している劇場もあります。
昨年の『夜明けのすべて』や『ぼくが生きてる、ふたつの世界』のように、この国のどこかの劇場でずっと上映していてほしい、という祈りにも似た願いです。
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P.S.
11/10「第50回報知映画賞」
作品賞・監督賞(永田琴監督)・主演男優賞(北村匠海)・助演男優賞(綾野剛)4部門ノミネート
11/12「第38回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」
主演男優賞(北村匠海)・新人賞(林裕太)2部門ノミネート
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10月25日映画館で舞台挨拶上映鑑賞
11月21日映画館でレイトショー鑑賞
10月25日★★★★★評価
10月25日レビュー投稿
10月28日・11月22日レビュー追記
11月16日レビューP.S.映画賞追記
泣ける 切ない
もうひと声
主人公たちの追い込まれ具合というか、ヒリヒリ感というか、もうヤバい、ダメー!、どうなっちゃうのー!といった緊張感、絶体絶命感がもう少し欲しかったなぁと感じました。決して暴力シーンを望んでいる訳では無いですが、マモルが尋問されたり、タクヤが〇〇されたりと壮絶な展開はあるのですが、結末に対して「あぁ良かったなぁー」といった感慨に繋がらなかったかなと。あとタクヤが佐藤から持ち掛けられた計画に対して、裏切りを見越して手を打つ計算高さや、あんな痛い目に会わされてるのに達観したようなところがなんか現実味が無かったかな(兄貴と慕う梶谷が側にいたからでしょうか?)
でも、こういう映画好きです、若者達が世の中や何かに抗いなが生きて行く群像劇。
ちなみ、希沙良を尾行してたり、マモルの部屋の様子を伺ったり、エンドの方でマモルを走って追っかけたのは実は刑事さん?。終わりに再登場の轟さんから察するにそう思えてきたけど、そうだとしたらストーリーへの関わり具合としてもう一つだったなぁ。伏線が感じられなかった。
終わりは3人のこれからがすごい気になる、思いを馳せるエンディングでした。
マモルは橋の上で何を考えていたのだろう…。梶原とタクヤはどうなるんだろ…。
原作では11月に続きが発刊されるそうで、是非映画でも観たいと思いました。
追加
タクヤの弟の葬儀のシーンで、
タクヤ越しのカットでは参列者が多そうに見えたけど、次の引きのカットでは梶原と2人だけの参列だった。タクヤの境遇、不幸さがヒシっと伝わってきました。
選択肢のなさ
自分自身の「身分」。
本作の真の深みは、タイトルに含まれる「身分」という言葉にすべて凝縮されている。単なる社会的階層や立場のことではない。“人間がどの瞬間に愚か者となり、どの瞬間にただの人間に戻るのか”という、きわめて実存的な問いを突きつけてくる。
全編にわたって張り詰めた緊張感がある。だがそれは、銃口を向け合うような表面的な緊張ではない。登場人物たちが、己の中に潜む「境界線」を踏み越えてしまうかどうか、その内的な緊迫だ。観客は息を詰めながら、その一線を越える瞬間を見守るしかない。
特筆すべきは、闇に引き入れた側の“負い目”の描き方だ。加害者でありながら被害者でもある彼らの表情に免罪は与えられない。ただ、闇の側へ引きずり込んだ者たちも引きずり込まれた者たちも、かつては「普通の人間」だったという事実を丹念に描く。その“普通”のリアリティがあるからこそ、転落の瞬間が胸をえぐる。悪とは特別なものではなく、日常の延長にある。その自覚が観客の心をじわじわと締めつける。
タイトルの「愚か者の身分」とは、堕ちた人間たちへの烙印であると同時に、我々すべてがいつでもそこに立つ可能性を秘めている、という冷酷な真実のメタファーでもある。
愚か者とは誰か――彼らか、見て見ぬふりをする我々か。映画はその問いを、闇の奥から静かに突きつけてくる。
本作は暴力や犯罪を描く物語に見えて、実は“人間の境界線”を描いた心理劇である。
緊張と沈黙の中で、観客は知らぬ間に自分自身の「身分」を問われている。
内藤病院
緻密で骨太、余情も残す。闇の中に鮮明に浮び上がる優しさが切ない。
海外の映画祭で北村匠海、林裕太、綾野剛が受賞したのも納得の素晴らしい演技。
脇を飾る山下美月、矢本悠馬、木南晴夏もしっかり印象を残す好演。
3人の視点から描く構成は多くは無いが使い古されたものと言えるが、決して流行りのトリッキーさを狙ったものでなく、物語をより鮮明に描くもので見事だ。
多くの伏線のようなものがあるが、これも流行りの伏線回収のための伏線でなく、物語に根付いてしっかりと、されどさり気なく描かれ、そしてさり気なくキレイに回収されて向井康介脚本は見事というしかない。
登場人物の心情を決して説明セリフで逃げない永田琴演出も傑出しているし、応えた演技陣も称賛に値する。
あまりにも酷く惨たらしい社会の闇の話なのだが、それ故に主要3人の優しさが鮮明に浮び上がるし、またそれ故に喰い物にされしまう構図が何とも切なく虚しい。
彼らの希望の光を切望する程の感情移入に、作品世界を壊してでもハッピーエンドを望む気持ちにもなるが、当然そんな安易に走る訳もなく、一縷の希望と大いなる不安を見せてのエンディング、心震わすしかない。
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