愚か者の身分のレビュー・感想・評価
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思ってたより怖かった
同じ年頃の子供がいます。ふとしたことで誘われて、戻れなくなっていくところが怖い。お前も来いって言われて、そんなつもりじゃないのに断れないところも怖い。臓器移植の話も怖い。若い子も見て欲しいと思った。
3人の男を通してみる裏社会の深み
綾野剛さんの雄弁な背中
この映画は、我々観客の常識的な理解力に対して、かなりの無理筋を強いてくる。それなのにあまり引っ掛かることなく最後まで見れてしまうということはそれだけ何かが優れていて、最終的には映画作品として力強いものとなっている。
無理筋例① タクヤくんの目玉くり抜き
腎臓や眼球は、脳死でなくても、つまり心停止後であっても、移植可能らしいが、だったらキッチリと殺して、遺体を病院に運んでからそれぞれ取り出すようにするのでは?
逆に生体のままでないと移植は難しいのなら麻酔をかけてから運ぶはず。
どちらにしても、素人が荒っぽくくり抜いたら肝心の網膜(角膜?)も傷ついて使い物にならなくなるリスクはかなり高いのでは?
無理筋例② 希沙良さん自由に泳ぎ過ぎ
女性が悲惨な目に合うような顛末は見たくないけど、物語りの展開上、そんなに簡単に追っ手を振り切れる?
【優れている何か】
言うまでもなく、主役3人のリアルな存在感。
タクヤとマモルの関係性はきちんと描かれていたけれど、梶谷が自分の危険を顧みずタクヤを救うことになるほどの関係性は物語の展開の中ではそれほど強くない。多少の同情はあっても、以前から裏社会に生きる梶谷を動かすほどとは思えない。それなのに、ラブホの風呂で、互いに全裸になり洗髪してあげるシーンひとつで有無を言わさない説得力が生まれる。綾野剛さんの細マッチョに鍛えあげられた肉体。これほど雄弁な背中は『悪い夏』の窪田正孝さんの上腕二頭筋以来かも知れない。
※本日の予告編で『爆弾』と『盤上の向日葵』が流れていました。
どちらの原作も心が激しく揺さぶられます。
『爆弾』の方は既に続編が刊行されていてこれもまた第一作に引けを取らず面白いのです。
両作品とも〝読んでから観る〟〝観てから読む〟どちらであっても2回3回と大いに楽しめるはずです。
怖さが良く伝わって来る
予告編から楽しい作品ではないことは予想できたが、キャスティングに期待して観賞。
【物語】
闇ビジネスで生活しているタクヤ(北村匠海)と弟分のマモル(林裕太)。彼らの仕事はSNSを使って生活に困窮し、現在身の上に絶望している男を探し出し、戸籍売却を持ちかけて買い取り、他人の戸籍が欲しい人間に高値で売り付ける商売だった。
そんな世界に暮らしながらもごく普通の若者である二人はいつかそこから抜け出したいと思っていた。あるとき、自分を闇ビジネスの世界に誘った兄貴分の梶谷(綾野剛)の力を借りて、タクヤはその世界からの脱出を実行に移そうとしていたが・・・
【感想】
予告編から想像した以上に怖い作品だった。
まず、脚本が良く出来ている。構成、ストーリー展開、会話に破綻が無く自然。闇社会がリアルに感じられたし、だからこそ中盤の“怖いシーン”がビシビシ伝わって来た。
役者もいい。
北村匠海、綾野剛は期待通りというところだがマモル役の林裕太も良かった。 (記憶の中では)初めて観た役者だが、ブレイク前の菅田将暉を“そこのみにて光輝く”で観たときのことを思い出した。このときの菅田は主人公演じる綾野剛を兄貴分として慕う“愚か者”だったのだけど、そのリアルさに感心し、印象に残った。それに近いものが有った。
ただ、本作の唯一の不満はタクヤが負った“怪我”のその後の扱い、そこだけはリアリティーを欠いた。あの“怪我”が素人手当で済むわけがない。あそこだけは筋書きをひと工夫して欲しかった。この手の作品だと信頼できる闇医者に担ぎ込むのが常套手段だが、ありきたりでもその方がずっとリアリティーを確保できた。
全体としては、刺さるものがあり良かったと思う。
今どきの闇バイトに興味を持ってしまった若者に、この世界に落ちてしまう前に観て欲しい作品。
コメディと紙一重のシリアス‼️❓因果応報‼️❓臥薪嘗胆‼️❓縦横無尽‼️❓
負の連鎖と優しさの継承
■ 作品情報
永田琴監督作品。主要キャストは、北村匠海、林裕太、綾野剛。共演に山下美月、矢本悠馬、木南晴夏など。脚本は向井康介。原作は西尾潤の同名小説。
■ ストーリー
身寄りのない男たちを言葉巧みに欺き、戸籍売買ビジネスで生計を立てるタクヤと、彼を慕う弟分のマモル。彼らは劣悪な環境で育ち、半グレ組織の手先として裏社会に深く足を踏み入れている。しかし、タクヤは、自身をこの闇の世界に引き込んだ兄貴分的存在の梶谷の力を借り、マモルと共に裏社会から抜け出そうと試みる。折しも、組織の拠点から大金が消失し、これをきっかけに、タクヤ、マモル、梶谷の三人は運命を左右する三日間の逃亡劇へと巻き込まれる。三人は、互いへの信頼と、過酷な裏社会の現実の間で揺れ動きながら、生き残りをかけて必死にもがき続ける。
■ 感想
一つの事件を巡り、それが三人の登場人物それぞれの視点から描かれることで、彼らの抱える葛藤や心情に深く寄り添うことができます。おかげで、観終わった後もずっしりと心に残る、なんとも言えない息苦しさを感じる作品です。
梶谷からタクヤ、そしてマモルへと連なる犯罪への加担は、紛れもない負の連鎖です。しかし、その底なし沼のような状況の中でも、悪党になりきれない彼らに見え隠れする「優しさ」が、この負の連鎖を「優しさの継承」と錯覚させるほどに印象的です。
身近で困窮する青年を弟のように思い、何とかしてその苦境から救い出してやりたいと願う彼らの姿には、確かに深い優しさがあります。しかし、犯罪の片棒を担がせること以外に救う手段を見つけられなかったという切なさや悲しさが、胸に迫ります。一度は引き込んでしまったものの、そのことを悔やみ、まっとうな道に引き返させたいと手を差しべるその姿は、じんわりと心に沁みるものがあります。
出演されている俳優陣に一切の隙がなく、観る者を圧倒するような迫力があります。おかげで、最後まで作品世界に没入することができます。特に、名だたる俳優陣の中で、若手の林裕太さんの奮闘が光っており、その存在感と演技力は、今後の活躍を期待させるものがあります。
誰もが最初から好き好んで犯罪に手を染めるわけではない。やむにやまれぬ事情を抱える人々がいるという現実を、本作は突きつけます。それでも、私たちは踏みとどまって生きていかなければならない。戸籍も心も、決して他人に売っていいものではないのだと、本作は強く、そして静かに訴えかけてくるようです。
健康で追われない生活の幸せを実感できる映画 一歩床板踏み抜いたら這...
意外と重くなく絶妙!
裏社会のスリリング映画
グローバル資本主義の闇
ボスのジョージは東南アジアの金塊ビジネスを展開し、
中ボスの佐藤は(おそらく海外の)闇カジノにはまり込み、
タクヤは中国の富豪夫妻への臓器提供者となってしまう。
ひと昔前なら、日本国内の資本主義の闇に翻弄される登場人物を描いてきたのでしょうが、「愚か者の身分」では昨今ならではのグローバル資本主義を背景にした貧富の差が垣間見える作品でした。
オープニングとエンディングで川上から川下と流れていく川を見つめるシーンが入り込みます。
川は辿っていくと、海へとつながってい行きます。
タクヤとマモルは離れ離れになりましたが、いつか出会える日がくるのではないか?という暗示ではあったのでしょうが、
これから行き着くであろう海(グローバル資本主義)を暗示しているようでもありました。
マモルが無造作にお金の入ったカバンを橋梁の道ばたに置くのも印象的でした。
クレイジージャーニーのゴンザレスさんがレポートするような世界の極貧街の小さな兆候が日本にも起こりつつあるようで、こころがざわつきました。
中ボス佐藤の関西弁もうちょっとなんとかならなかったのかな、そこさえ気にならなければ。
人間が人間でいるために本当に必要なもの
2025年も残すところあと2ヶ月。いろんな映画を観てきたけど、今年、印象に残った映画を聞かれたら、はずせない映画に出会った。
今年も綾野剛さん、北村拓海さんはそれぞれ印象的な役柄で我々映画ファンを楽しませてくれたし、脚本の向井康介さんは年内「平場の月」でも話題になると思う。映画ファンならこの3人の名前で鑑賞動機になるかもしれない。
なので、あえて映画ファン以外の方に強くおすすめしたい気持ちで書いている。
新宿歌舞伎町。暴力団より悪辣な○○連合が幅を利かせた時代を舞台に、戸籍詐欺を生業に底辺で喘ぐ男たちのクライムサスペンス。あまり重要に感じないシーンなどが後半に効いてくるから、集中して観た方がよい。
モラルが崩壊した詐欺行為や非人道的な暴力の中で、人間が人間でいるために本当に必要なものは何かが炙り出されていく。このコントラストが切ない。
人間が生きるために必要なもの。それは他者を思いやる気持ちなのかもしれない。人間は他者との関わりなしでは生きていくことができないからだ。
エンディング曲のタイトルが「人間讃歌」と知った時、自然に涙が流れた。
暴力を娯楽にしない誠実さ
ホラーでは体験出来ない
生々しい恐怖に目が離させない。
暴力を娯楽ではなく恐怖として
描く作品の誠実さ。
加害者は育った環境の被害者であることが多く
反社や半グレになりたくて
生まれてくる人は恐らくいない。
大金を求めた理由からも良識があるタクヤが
この世界に馴染めないのは必然。
本作が北村匠海さん主演の意味は大きく
キャスティングによっては
作品の重さに耐えきれない可能性も。
残酷過ぎるあのシーンにも。
やはり生々しい現実を描く作品には
本作のように一筋の光を見せて欲しい。
あまりにつらく、救いようがないのですが・・・
ぬかるみで足掻く若者たち
どこまで実態に忠実かはわかりませんが、えぐい内容。
社会に頼る道がなく、親から暴力を受け、周りに差別され、貧困に落ちた若者たちが、金のために安易な方へ流されるとどうなるか……
半グレとか言われたところで、大規模組織じゃないだけのヤクザやマフィアと変わらない状況が描かれる。
罠に嵌め、罪を着せて、臓器や命を取り、金を奪い合う。
一度でも反社・闇ビジネスの世界に足を踏み入れたら、二度と出られない、泥濘(ぬかるみ)。
そんな中に落ちて足掻く、主演の北村匠海、助演の綾野剛と林裕太の3人が演じる若者たちが、お互いを想いあう姿は切ない。
その演技はすさまじく、実に救いのない内容に、観ていて冷や汗が流れました。
彼ら弱者が、幸せとまでは無理でも、少しでもマシな暮らしができるように祈る気持ちは湧いてくる。
だが、彼らが生き延びるために「より弱者」を騙し、搾取した罪は、許されるようなことではない。
とはいえ、ここまで苛烈な報いが必要なのか?
因果応報、自業自得の末なので、決してかわいそうとは思わないものの、同情の余地のみがあった。
そういう、引き込まれるほどのリアリティが詰まった創作だった(リアルであるかはわからないが)。
本作から学べることは、若い人には「安易な道に行かないこと」、年寄りには「お前たちの考える貧困や我儘とは違う地獄が世の中にはあるよ」ということかな。
鯵の煮付け
ドブの中で踠く鯵たち
胸が苦しく、余韻が長引く…。目ん玉の件、病院が先では?
闇の世界の中で生きざるを得なかった若者たちが、それでも「生き直す」道を探そうとする映画です。
作品にはとても厳しい描写も多く、正直、私は観ていて胸が苦しくなる場面もありました。現実の重さや、人の弱さがあまりにも生々しくて、少ししんどかったです。
それでも、登場人物たちが見せるささやかな優しさや、誰かを思う気持ちには救われる瞬間がありました。
闇の中にいても、わずかに差し込む光を信じたい-そんな想いが静かに心に残ります。
決して軽い気持ちでは観られない作品ですが、だからこそ、人が愚かであることの中にも希望を見つけられるような、深い余韻のある映画でした。
観終えたあと、描写の気持ち悪さを引きずりつつ、自分の中の「弱さ」や「優しさ」について、そっと考えさせてくれる一作です。
目ん玉の件。病院に先に行ってほしいものです…。
弱者男性からの搾取
日本の映画で裏社会とか貧困を描くと、どうしても弱者として扱われ、搾取されるのは女性になりがちだが、本作では社会的な弱者に陥った男性たちが、抜けられない搾取の連鎖の中でもがく姿が表現されている。
かなり後半まで地獄なので、ずっとムナクソが悪いが、最後に一時の光明が差す。
しかし、その時間は長く続かない。
そんな空虚な一瞬だからこそ、今という瞬間が尊く愛おしい。
歌舞伎町や都庁といった、「東京」を象徴する場所を背景にして、この国の首都は、まだまだそこに暮らす人々にとっての「後進国」であることを忘れてはいけない。…
そんな映画。
まずは主役の男性3人の好演。山下美月も良い。
しかし、本作で唯一の「太陽」、木南晴夏のパワーときたら。
『悪い夏』では弱者女性の「陰」の部分をほぼ独りで背負っていた彼女。
スーパー前で登場した後、ほぼ電話での声しか出て来ないのに、スクリーン内どころかスクリーン越しにそのポジティブなオーラが広がる。
「彼女は無事であってくれ!」
そう思わずにはいられない。
いわゆる戸籍ビジネスの暗部をかなり詳細に見せてくれたノワールサスペンスとしては途中でダレる時間もなくテンボも早いが、お話全体の構図は先日の『ホウセンカ』にも似ていて、それほど目新しいとは思えず、役者たちの良さが引っ張っている印象になっているのが惜しい。
最後の「え?あの人!」も良かったよね。
全114件中、21~40件目を表示
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