「どうすれば良かったのか」愚か者の身分 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
どうすれば良かったのか
丁寧なのだろうが、前半の3人の解説パートが長すぎる。重複が多くて正直飽きてしまった。もう少しうまく編集したらよかったのに。
最後までこの調子だと見るのがちょっと辛い、と思い始めたら、目をえぐられたタクヤ(グロすぎ!)を梶谷が運ぶ話になり、以降は違う映画かと思うくらいの急展開。
タクヤもマモルも他人の一生を奪うような極悪犯罪で生計を立てているので気の毒と思うのは筋が違うが、劣悪な環境で育ってきて、無知で、戸籍まで売ってしまった二人がまともな衣食住と何らかの仕事を得るには、犯罪界隈で生きていくしかない。そしてシビアなツケも払わされることになる。
人を食い物にした挙句自分も食われる、そういう愚か者になるしかない身分として、生まれた時点で固定されたようです。
彼らは、どうしたら良かったんだろう。どうすることができたか。
簡単に戸籍を売ってしまう人がいるのは事実らしい。
せっぱつまったにせよ、甘言に乗せられたにせよ、戸籍をなくしたらどんなことになるのか想像できないタクヤやマモルや江川(谷口?)みたいな人々は存在する。
食い物にされる人たちの多くは、「無知」に付け込まれている気がする。
食い物にする方が悪いのは当然だが、まともに教育を受けられなかった人たちが犠牲になりやすくないか。
無知な上に無防備、コドモなマモルの言葉の端々や仕草から、親の虐待と悲惨な生活が見えて、たった一人の肉親(多分)である弟を失っているタクヤは、マモルに弟を見たよう。面倒を見てやり、おばあちゃん仕込みの鯵の煮つけを見事に作ってあげて一緒に食べる。
山盛りの白いご飯と一緒に「こんなにうまいもの初めて食べた」ともりもり食べるマモルが微笑ましくも鼻の奥がツンとしました。
この映画は、温かい家庭と縁がない3人の男たちが、束の間、「温かい兄弟」を手に入れた話でもあったと思う。
あるときは兄となり、ある時は弟、親子とも違う、かばったりかばわれたり一緒に遊んだりして築く横の関係を、3人は無意識に求めて手に入れたんだと思う。そのあたりを、臭くならずにさらっと描いているのがとても良い。
タクヤを連れて神戸に身をひそめる梶谷にタクヤが作るのはやはり「鯵の煮付け」。
大変美味しそうです。心の底で焦がれている「家庭」の味が、最高の調味料なのでしょう。お味噌汁もつけたいね。
梶谷の関西弁の彼女ユイカが温かく世話焼きで、声を聴くとほっとした。
神戸のママも良い人のようだし、梶谷は働き者だし「弟」のタクヤ君の面倒をよく見て、兄弟の温かみを味わっていたよう。総金歯のジョージの半ぐれ一味も逮捕されたのでこれで安全かと思いきや、すでに警察の手が回って逮捕寸前とは。でもまあ、逮捕されて国に面倒見てもらった方が良かったんじゃないか。戸籍のない状態(自分の戸籍を証明できない状態)は、騙されてそうなったので何らかの救済はないんだろうか。半グレは全国組織ではないようで、都会を離れたら力がない模様、マモルはなんとか逃げ切ったようだし(さびしそうだけど)私にはそこそこのハッピーエンドに思えました。(彼らに食い物にされた被害者は救われておらずではああるのですが。。)
タクヤにしても梶谷にしても、他人をだまして二束三文で戸籍を買い叩いてその人の人生を奪った罪悪感を持っていて、タクヤ以外、江川以外の被害者のことは考えていないにせよ、償いをしたところにわずかに救われた。
やたらに強いマンガみたいな総金歯の半グレのアタマ、ジョージがチョー怖かった、ガタイ、超合金なの?
主演の3人がとても良くて、ずっと見ていてもいいくらい。
林裕太くん、今まで知らなかったけどコドモのまんま、野良猫みたいな無邪気さが痛ましいような弟分が素晴らしい。この映画の主役は実はマモルかも。
ちょっと困ったように見える綾野剛の笑顔は、人懐っこく愛情を感じる笑顔でたまりません。
そして、光と闇と、雑多な人間模様がないまぜに存在する新宿という街があっての映画だったと思う。現地のロケが効いており、つるんで闊歩するタクヤとマモルが生き生きと映えていた。
どんな者でも拒まず、それなりに幸せに生きることが許される懐の深いところ、そして冷たく突き放し、手を差し伸べてはくれないところ。
3人が幸せな気分を味わい、どん底に落とされた、新宿の街を、助演に加えたいです。
コメントと共感ありがとうございます。闇ビジネスから抜け出そうとしてもその界隈にいる人間関係から抜け出すのが難しいですね。身寄りのない状態で信頼する人(タクヤにとっては梶谷、マモルにとってはタクヤ)がやっているからとその世界に飛び込む流れがすごく自然で痛々しかったです。。マモルの無邪気さ、とても素晴らしかったです👏
共感ありがとうございます。
後半はつけを払う時・・みたいで飲み込めたんですが、前半の反社の青春!みたいな感じはちょっと駄目でした。当初、逃げ切れた太陽がいっぱいみたいに思えましたが、そうもいかないみたいですね。
風呂で洗ってやる所も良かったですね。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。


