「切ない青春」愚か者の身分 himabu117さんの映画レビュー(感想・評価)
切ない青春
青春を謳歌できる、それがかなわない若者と現代の闇、誰が悪い、社会が悪いなんて言うつもりもない、いつの時代にも家庭の温もりや小さな幸福とは縁のない若者はいた。ただ今の日本の現実は、しっかりと刻んでおいた方がいい。
搾取される若者
搾取する側とされる側
なぜにこうも現実は、弱者に厳しいのか。
家庭的に恵まれなかった若者
いつの時代にもあるけど
経済が停滞し、景気のいい話が出てこない昨今
タクヤとマモルのような境遇も現実感がある。
5人兄弟の末っ子、貧しい家庭を捨てて都会でもがくマモル。
貧困ビジネスの安宿でタクヤと出会い、闇バイトの世界に。
稼いだお金で、2人で新宿を遊び歩く場面が秀逸だ。
ああ、この2人は味わうことのできなかった、青春を楽しんでるんだな。
そんな姿が、切なく見えてしまう。
今まで、こんなに楽しい時間を過ごしたことがなかったんだろうな。
昔から不遇な若者はいた
私の生まれ育った、昭和の時代にも家出少年は沢山いた。
今より多かったかもしれない。
子供の絶対数が多かったから。
昭和から平成にかけて、日本は景気がよかった。
あの頃家出少年の働く場所は、いわゆる住み込みの仕事。
そんな募集が、多かったです。
中小企業や個人商店がかなりあったし。
そんな企業や、商店の労働力として重宝されていた時代。
ただ、身分証とかどうなのかな、保険証だって必要だし。
その辺りをクリアあるいは、グレイにしても雇ってくれるところはあった。
何年か勤めて、次を探すなり、あるいは雇主が保証人になってくれてアパートを借りたり。
まだ、方法はいくつもあった。
だが現代は、アプリでその日の仕事を探して、ネットカフェで寝泊まり。
あまりにも不安定だ。
誰とも深く関らず、1人で生きてゆく。
そんな孤独な時代だと言うこと。
映画は、前半は都会の孤独。
そこでもがく若者の姿。
よく描けていると感心する。
だけど、後半はやや安直に物語に収めようという感がする。
闇バイトに関って、そのお金を持ち逃げした者がその後逃げ切れるとも思えない。
悲しい現実を想像してしまう。
タクヤが作るアジの煮付けが象徴的だ。
彼らの生活に、おおよそそぐわない丁寧なおかず。
そんな安心できる、家庭環境があったら、彼らのように路頭には迷わない。
若者は、安心できる場所があって初めて旅立てる。
またいつでも戻れる場所。
それがかなわない多くの少年少女が、歌舞伎町にたむろする現実。
家庭や家族、安心できる場所。
そんな環境の大事さをこの映画は、突き刺してくる。
