「リアルで、少しだけファンタジー、そして途轍もなくヘビーな映画」愚か者の身分 虚無さんの映画レビュー(感想・評価)
リアルで、少しだけファンタジー、そして途轍もなくヘビーな映画
かなり疲れました。観終わった時には、もうグッタリでした。
展開が読めないところは面白かったような…でももうちょっと救いがあってもよかったような…いや、あったのかもしれないけれど。
とにかく辛い話でした。
街の雰囲気は今風でしたが(正確には外国の方がもっと溢れていますが)、戸籍売買に臓器売買、親に恵まれず闇に生きて行くけれど半グレに利用され…というと、時代設定は90年代後半からゼロ年代辺りでしょうか。
タクヤについて、
「それほど悪いことをしていないのに、可哀想」
と思ってしまいました。
そして、私の善悪觀念はおかしいか!? とちょっと悩んでいます。
もちろん違法行為には違いなく、安易にラクに稼げる処へ身を寄せたのだから自業自得と言えなくもない。
けれど、ゼロ年代は、身寄りのない若者にとって普通に生きて行くことが難しい時代でした。
それでも、頑張って悪に手を染めずに生き抜いた人はたくさんいる! との反論はもっともなのですが、全員が生き抜けるほどのキャパはなかったと思うのです。
「それほど悪いことをしていないのに」と思ったのは、昨今の闇バイトと比べて、なのかな。
ゼロ年代と今を比べると、全体や平均はよくなっていると思います。
でも、悪のレベルは上がっている気がするのです。
自分が金を得るために、どこまで酷いことができるかのレベルです。
私見なのですが、摘発や取り締まりを厳しくすればするほど、悪のレベルは上がっていく気がします。
取り締まりが不要だと思っているわけではないのですが、強力な殺虫剤を撒いても、害虫は進化して生き延びるだけ、みたいに思えてしまう…
(我ながらヒドイ喩えで申し訳ないです)
虚無さま
『宝島』のコメントに返信いただきました🙂
今作も映画を観た後に、原作を読んでいます。
「闇金規制法」により「振込詐欺」が生まれて、その「振込詐欺」も海外に大規模な拠点を移し、闇バイトは「トクリュウ」型の強盗になりました。
強盗殺人は量刑が重い罪だと授業で習いましたが、タクヤは詐欺だけなら数年の実刑、マモルは執行猶予、梶谷は仕事の内容次第…警察に逮捕されてやり直す方が安全かと思いました。
グロ耐性ゼロの私がギリOKだったのは、女性監督と女性原作者の、母性のような包容力を感じたからだと思います。
原作者は初号試写を観て、「3人は誰も死んでいないので彼らの未来を書きたくなった」と、続編「愚か者の疾走」が11月11日に出版されます🫡

