「想像してたより…」愚か者の身分 ウァンさんの映画レビュー(感想・評価)
想像してたより…
題材に興味があったので上映前から楽しみにしてた作品。
安っぽい映画になってたら嫌だなって思ったけど、想像してたよりすごく良い作品で130分があっという間だった。
戸籍売買で稼ぐ若者の話で、タクヤ、マモル、梶谷の3人の視点で描かれている。
ノワールものって観終わった後に救いようがなくて心がぐったりするのだが、これは観終わった後、真っ暗闇の中にわずかな光があって不思議とぐったりはしなかった。
好きなシーンは色々あるけど、
まずは、タクヤが家に帰ってきた後のところ。
実際にあの部屋で何が行われてるか直接的な描写はなかったけど、どうなったか先にマモル視点でわかっていたのであのシーンは恐ろしかった。
次はタクヤの飯を作るシーン。
目がなくなっても、体は覚えてるから上手に魚を捌くし、おにぎりもにぎる。何より飯が美味しそう。
あと2人が2段ベットの下で向かい合って話してる場面。
ベットのライトがマモルはオレンジっぽい色、タクヤは白っぽい色でこれが対比になってるところもよかった。
そして個人的にぐっときたのが、マモルがタクヤの部屋を掃除してる時場面。
マモルの腕に結束バンドの跡が赤く残っているところがよかった。神は細部に宿るじゃないけど、そういう細かなところがこの映画の作り手に対する信頼がより強くなった。
というか、好きなシーンが多すぎる。
これ以上書くとキリがないから割愛。
キャスティングも良くて、
綾野剛は言うまでもないが、北村匠海がいい俳優になってるなと改めて実感した。
マモル役の林くんも瑞々しさがあり、今しか出せないあの感じがいいし、何より彼は目が凄くいい。
3人以外のキャラもよくて、
ジョージの金ピカの歯と髪型とガタイの良さなど全部が気持ち悪くてこわいし、中国人夫婦の金で全てを掌握してそうなあの風貌(最近逮捕された某宗教団体のトップ風)もぴったりだし、佐藤のぎょろっとした大きな目にどっぷりとした体型がこれまた胡散臭くていい。
だめだ、これも好きなキャラが多すぎてキリないから割愛。
ただ1点だけ、目をくり抜かれた後ってあんな感じで動けるのかな?とは疑問に思ったけど、エンドロールで眼の監修が入ってたからまあそこはいけるということか…とそこだけ引っかかった。
だけど引っかかったとしてもそれを遥かに上回るくらい物語が良かった。
私自身、闇バイトに加担した若者の裁判を傍聴したことがある。理由の多くがギャンブルによる借金などこれだけ見れば自業自得に思えるが、その個人の背景を紐解いていくと生育環境に問題があることが非常に多い。
実際に私が裁判でみた若者もマモルのような生育環境だった。
マモルやタクヤは決してフィクションでない。
今もどこかにこの2人のような子はいる。
そんな子達を社会は見捨てず、どうすることができるのか考えるきっかけのひとつになればいいなと思った。
ウァンさま、初めまして🙂
グロ耐性ゼロの私がギリOKだったのは、女性監督と女性原作者の、母性のような包容力を感じたからだと思います。
マモル役の林裕太さんは、この作品で唯一オーディションで選ばれたそうですが、見事に期待に応えてました。
最後の刑事がパパ活焼肉の囮捜査官だったのは、最高の伏線回収でした。
「賢者の贈り物」のようなラストと、エンディングの「人間讃歌」に泣きました🥲
原作は3人の3年後を書いた続編「愚か者の疾走」が、11月11日に出版されます🫡
uzさん
コメントありがとうございます。
襟足もよかったですよね。
鼻の穴の動き!目がないので涙が流れない代わりに、鼻の動きでそれを表現するとは北村匠海さすがです。
uzさんからのコメントでまたもう1回観たくなりました。


