「兄弟のような絆で結ばれた3人の男達の姿に胸が熱くなる」愚か者の身分 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
兄弟のような絆で結ばれた3人の男達の姿に胸が熱くなる
兄と弟のような絆で結ばれた3人の男のそれぞれに焦点を当てた、3部構成の物語なのだが、その主要な登場人物と時間軸が面白い。
第1部と第2部は、主人公(北村匠海)が殺されかけるところまでを、主人公の弟分(林裕太)の視点と主人公の視点から描いていて、「あれは、そういうことだったのか」という種明かしが楽しめるし、弟分が面倒事に巻き込まれないように配慮した主人公の思いやりのようなものも感じ取ることができる。
続く第3部は、第2部の結末を起点として、主人公の兄貴分(綾野剛)が、主人公を連れて、半グレ集団から逃げようとする様子が描かれるのだが、ここでのポイントは、兄貴分が、組織を裏切って逃亡することを決意する経緯だろう。
それは、主人公とその弟分との関係を、そのまま自分と主人公との関係に当てはめたからだろうし、弟分を助けようとしていた主人公と、主人公を売ろうとしていた自分とを重ね合わせたからでもあるだろう。兄貴分は、主人公が、実の弟を亡くしていることも知っているし、それがきっかけで、主人公を闇ビジネスに引き込んでしまったという負い目もあったに違いない。
こうした経緯が描かれているからこそ、兄貴分が、自らの命を危険に晒しても、主人公を助けようと決断する展開に納得できるのだし、兄弟のような絆で結ばれた彼らの姿に胸が熱くなるのだろう。
主要な登場人物である3人が、同じ画面に収まることは一度もなく、あくまでも一対一の関係であることも、兄貴分として振る舞う時と、弟分としての振る舞う時の、主人公のキャラクターの二重構造を際立たせていたように思う。
ラストは、一応、ハッピーエンドと考えてよいのだろうが、主人公があれだけ残酷な仕打ちを受けていたので、金歯が印象的な半グレのボスだけでなく、主人公を陥れたその手下にも、肉体的に痛い目に遭ってもらいたかったと思えてならない。
それから、まさかあの男が刑事だったとは思い付かなかったが、ラストは、刑期を終えて、真っ当な暮らしを送っている3人(+兄貴分の恋人)が、皆で食卓を囲んで鯖の味噌煮を突ついているシーンにして欲しかったと思ってしまった。
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