「人生讃歌」愚か者の身分 ブレミンガーさんの映画レビュー(感想・評価)
人生讃歌
「ミーツ・ザ・ワールド」と同じく新宿を舞台にした作品が同じ週に公開されるっていうのは運命ですね。
こちらはヘビーな内容ではありましたが、エピソードがとにかく濃く、三者三様の物語の繋がりがお見事でやられっぱなしでした。
あらすじをサッとしか目を通してなかったので、ポスターの3人が同じタイミングで行動していくもんだと思っていたんですが、それが違ったのも良いギャップが個人的には生まれていました。
戸籍売買を生業にしているタクヤと舎弟であるマモルの物語から始まり、その戸籍売買がトラブルに発展していくのかなと思いきや、組織内部でのやり取りが原因で話が広がっていくというのが良かったです。
タクヤとマモルがしっかり仕事をやったり、仲良く飯を食べて酒を飲んだりするところなんかは裏社会の話とは思えないくらい良い雰囲気でしたし、マモルの過去回想はかなり激重でしたが、タクヤと共に生活をするごとに心を開いていき、タクヤと共に違う世界へ出ていくというのも良きでした。
2人で魚の煮付けを食べるシーンとかめちゃくちゃ大好きで、シンプルなおかずとご飯ですが本当に美味しそうで幸せな瞬間でした。
タクヤ視点でも過去回想で家族を亡くした過去が明かされたりとで激重かつ、マモルを裏社会に誘ったことを悔やんでいたり、なんとかこの世界から逃げ出そうと考えていたりと、良い人が出まくっていて心がキューっとなりました。
徐々に不穏な雰囲気になってはいきますが、その展開まで持っていくか…とヒュッとなる時は辛かったです。
目玉はスプーンで軽くすくえるだったり、中国人夫婦の奥さんの目の手術だったりとで伏線はあったんですが、まさかその伏線の回収をガッツリやるかつその絵面をドーンとお見せするところは流石にビックリしました。
思いっきり目から流血しているもんですから鳥肌が立ちましたし、それを病院に運んで腎臓も取って…と更なる方向性に向かっていくのでゾワゾワしてしまいます。
そこにタクヤの兄貴分である梶谷がやってきて、その姿を見て驚くのですが、感情が表に出る人なんだなというのが意外性があって良かったですし、タクヤを病院に連れて行こうとしたのを後悔して、すぐさま逃亡に切り替えるところが男らしさ全開でカッコよかったです。
ホテルで髪を洗ってあげるシーンとか優しさが滲みまくってて良かったです。
終盤の畳み掛けのクライマックスもえげつなく、裏社会との決別を決意しつつも、それを許してはくれないお偉いさんとのバトルは見応えがありましたし、人との縁を感じられる逃亡ってのも良かったですし、マモルの寂しそうな顔で終わっていく余韻込みなものもとても好みでした。
タクヤと梶谷で一緒に魚の煮付けを食べてるシーンもこれまた良くてお腹が魚を求めていました。
細かなところの伏線も回収したり、罪滅ぼしをやり切るところなんかもメイン3人の義理堅い性格が物語の暖かさに繋がっていたなと思いました。
主演3人含め役者陣の好演も今作の素晴らしさに彩りを加えてくれていたなと思いました。
とんでもない爪痕を残しつつも、どこか清涼感のある、不思議ながらとても見応えのあった作品でした。
面白い邦画が盛りだくさんで日本人としてめちゃめちゃ嬉しいわ〜となりっぱなしです。
鑑賞日 10/24
鑑賞時間 14:50〜17:10
面白い邦画がざくざくでほんとうれしいです。うれしいんだけど、長尺傾向はツライです。
あれもこれも見たいと思って、先週「盤上の向日葵」「爆弾」と本作、一日3本鑑賞の荒行をやったら脆弱なアタマがオーバーヒートしてドリフのギャグみたいに白煙上がりました。。。

