劇場公開日 2025年7月25日

「絶対に遅刻は禁物ですよ、な一作」MELT メルト TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 絶対に遅刻は禁物ですよ、な一作

2025年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2023年のサンダンス映画祭で最優秀演技賞(ワールド・シネマ・ドラマティック部門)を受賞した本作。米国映画レビューサイトの評価も高いことから、期待を胸にして新宿武蔵野館で鑑賞です。
今回も鑑賞前にあらすじは勿論のこと、トレーラーも観ずに鑑賞に至ることが出来ました。ちなみに、私が度々「米国映画レビューサイト」での評価に触れるのはその信頼性もありますが、自分の英語力の低さを武器に(?)余計な情報が目に入りにくくする意図も小さくありません。(映画.comの解説・あらすじは雄弁すぎるため、作品鑑賞前は主に劇場公開日とスタッフ・キャストの確認にのみ利用)
その成果もあってか、本作冒頭からアバンタイトルにおけるシーンはけして長くはないものの、「これ、何の意味があるんだ?」と謎だらけなエヴァ(成人・シャルロット・デ・ブライネ)の行動に、これは集中しないと…と改めて緊張が走ります。なお、本作の主役であるエヴァは「少女期」から「成人期」を通じて口数は少なく、やや神経質な感じは伝わるものの基本的には表情から感情が読みにくいタイプ。そのため、どことなく不穏さを秘めていて否が応でも目が離せない「存在感」が際立ちます。(少女期のエヴァを演じたローザ・マーチャントが、サンダンス映画祭で最優秀演技賞を受賞したことも激しく納得です。)
そしてその後、『Het Smelt』とタイトル(オランダ語による原題ですが、英題『When It Melts』と同義。)が出て以降は、エヴァの過去を振り返りながらの編集に慣れてくると、その情報開示具合の塩梅の良さが絶妙なことに気づいて「なかなかやるな」と思わず感心します。本作が長編映画監督デビューとなる俳優、歌手であるフィーラ・バーテンス監督、いい仕事です。
それにしても、作品が進むにつれて徐々に知ることとなる少女期のエヴァに起こっていた過去は、13歳の少女にとってあまりにも理不尽で過酷なことの連続。と言うことでここで一つアテンションですが、本作これ以上ないほどに「胸糞」さ溢れる内容のため、観るにあたってそれなりの注意が必要だと思います。或いは私のように「前情報を入れない」というのが推奨されない可能性もありますので、ご覧になるにあたっては十分にご留意ください。
と言うことで、今回敢えて触れた「アバンタイトル(シーン)」ですが、実はそれこそが本作の肝で重要なシーン。その為、改めて前後を含めて繰り返えされはしますが、この印象強い編集のおかげで終始にわたり不安を煽り続ける「あるアイテム」は本当に強力。編集のトーマス・ポータスにも賛辞を送ります。
いやはや、実に嫌な映画でした(褒めてます)。しばらくは観返したくないっす(苦笑)。

TWDera