劇場公開日 2025年8月8日

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「昭和的失敗自主映画の典型」ハオト たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 昭和的失敗自主映画の典型

2025年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

太平洋戦争末期の精神病院を装った特殊機密施設を舞台に「外と中のどちらが狂気か?」というテーマで2005年に下北沢・本多劇場で初上演した創作劇を映画にしたくて20年間温めて続けてきたという丈監督が自らプロデユースし脚本と演出、出演もした。池袋のシネマ・ロサでしか上映していないインディーズ系で、友人に「感想を聞かせて欲しい」と言われなければ知ることも観ることもなかったが、なんでも自分でやりたがってしまう自主映画にありがちな仲間内スタッフ&キャスティング、小劇団的自己満足的仕上げることを優先した失敗作となっており残念。アイデアがすごく面白くて物語りもぼちぼち良いのだから企画をアスミックあたりに持ち込んできっちり予算を掛けて藤井道人か吉田大八に撮らせていれば超傑作が出来たのにと思うと悔やまれる、というか今からでも誰かにリメイクして欲しいくらい。これだけのアイデアとテーマを持ちながらそもそも軍人(=戦場で死ぬこと)から逃げている主人公の原田龍二がミスキャストなのか演出できていないのかあまりにもくったくが無く、特攻に行く弟との手垢のついたお涙頂戴お別れシーンの凡庸さったらなくて自身の変心にいたるアンビバレンツな感情の揺れ葛藤が全く描けておらずあきれる。演劇的せりふ回しの違和感には目を瞑るとしても2ショットアップの意味の無いあおりや俯瞰カットにそそらない銃撃戦、どの部屋に隠れているのかハラハラさせる無駄な演出を映画だと考えているのならお門違いでそれよりおままごとで済ませられる舞台美術と違って細部まで高精細で写る映画のリアリティを考慮してもらいたい、外の空を見上げる木造校舎の窓枠サッシがばればれで一気に萎えるのだ。

たあちゃん