イカロスとミノタウロス
解説・あらすじ
「EUフィルムデーズ2025」(25年5月9~29日=大阪・テアトル梅田/6月28日~7月11日=東京・シアター・イメージフォーラムほか)上映作品。
2022年製作/76分/ルクセンブルク
原題または英題:Icare
スタッフ・声優・キャスト
- 監督
- カルロ・ボーゲレ
「EUフィルムデーズ2025」(25年5月9~29日=大阪・テアトル梅田/6月28日~7月11日=東京・シアター・イメージフォーラムほか)上映作品。
2022年製作/76分/ルクセンブルク
原題または英題:Icare
鑑賞前に知っていたことは、「ピクサーでアニメーターとして数々の名作を生み出してきたカルロ・ヴォーゲレによる監督デビュー作」ということだけだった。二つの名前は、ギリシャ神話でみた気がしたけれど、場面写真は、男の子と白牛が仲良さげにもたれ合っているのが、それぞれの神話と懸け離れていて、結びつき難かった。
冒頭で白い牛と女性が密会する場面があり、次に海辺に住む男の子イカロスが父と呼ぶ高齢男性ダイダロスと会話をして、ギリシャに関係した話題だと窺えるようになる。牛と密会していた女性は、実は王妃パシパエで、ダイダロスに女神像の彫刻を依頼していた。パシパエは王ミノスとは仲が良くないようで、ダイダロスも、ミノスからの仕事の依頼はなさそうだったが、ある日、迷路設計の依頼がきていた。同行したイカロスは、迷い込んだ先で、牛の顔をした王子アステリオスに会い、親しくなる。王女アリアドネは、母であるパシパエを嫌っていた。遠方からやってきた王子テセウスは、ミノスの挑発に応じて、断崖から海中に飛び込み、指輪を拾って戻り、王子として認められる。アリアドネは、イカロスも交えての踊りの練習をした後、テセウスの気を惹こうとするが、テセウスは相手にせず、アリアドネは焦る。アリアドネは、ダイダロスに迷宮の設計図を渡すことを頼むが、ダイダロスは断り、イカロスが代わりに入手しようとして、ダイダロスは怒って設計図を燃やしてしまう。イカロスは、代わりに原案の巻き貝の図と糸巻きをアリアドネに渡し、アリアドネはテセウスに渡しに行き、テセウスも心を開く。イカロスは、アステリオスの切られた角を渡し、アステリオスの真実の姿をみるように忠告する。迷宮にはいったテセウスは、仕掛けに翻弄された揚げ句、アステリオスを剣で斬り殺す。返り血を受けて戻ってきたテセウスをアリアドネは喜ぶが、イカロスは悲しみ、二人を帆船で送り出す。立ち寄った先で一夜を過ごした後、テセウスはアリアドネを置き去りにしてしまう。イカロスは、すべてのものは空気と土から成ると言うダイダロスとともに迷宮にはいり、散乱する鳥の羽から翼をつくり、二人で空に飛び立ち、アステリオスと抱き合って終わる。
映写会場と同じ建物にある図書館でギリシャ神話の原作を確認すると、パシパエが牛の顔をした王子を産むことになったのは、ミノスが神の望んだ美しい牛を生け贄として捧げることを渋った報復で、生まれたミノタウロスは凶暴で、若者を生け贄として求め、テセウスは求められた国の複数の若者に紛れ込んでミノタウロスを征伐しようとして、アリアドネの助けを受けて剣ではなく拳で殴り殺し、戻る途中でアリアドネを置き去りにし、国に喪の旗をつけたまま戻って父王が自殺をしたという結末になっていた。
アステリオスの風貌や性格が原作と正反対に穏やかに描かれていたので、『美女と野獣』や『かえるの王様』のように、魔法で姿を変えられた王子のようにも感じられたが、真実の心を見出すのは、異性ではなく、同性の男の子で、その男の子が夢を叶えて翼をつけて空に飛び立ち、「天国」(?)で再会するという結末は、原作よりも美しく終わっていると感じられた。